[短編(オリ)]クリスマス……? 3

「くーりすーまー」

 呑気な、リズムも音程もへったくれもない歌を口ずさみながら、支度はどんどんと進んでいく。

「すーがこーとしはー」

 そういう日だから、と器用ではない手で出きるだけの飾りつけを行う巨体は、尻尾に体重をかけて、後ろ足で天井近くにペタペタと可愛らしいマスキングテープを貼っている。

「すっぺしゃるかー」

 指のない、爪で器用に切っては、甲でしっかりと貼り付けていく。そして手元に飾るものがなくなれば、ゆっくりともとの体勢に戻って足元の材料を抱えて、よいしょとまた立ち上がる。

「ねんまっつにー」

 危なげなく進んでいく装飾が一段落して、

「おっそうじ」

 ゴミを片付けて。

「なんってわっすれてさー」

 やりきった。一息つく彼、ことリエードは満足げにあたりを見渡して、満面の笑みだ。意味のないアレンジ曲も途絶えて、ごろりと寝転がる。次は夕飯だ、と呟くも、慣れない作業に疲れはてた肉体は、思うように動いてはくれない。

「10分、10分だけ休も」

 尻尾を付け根から、ゆるーく動かして、脚をぐっと伸ばして、縮めて、ごろりと寝返り。狭い部屋を占領するその姿を、咎めるものはいない。


 だけ、という宣言というものは、その心や意思どころか、目覚まし時計にも作用しないもので、次にリエードが目覚めたのは、寒さが戻ってくる夕方のこと。

「あ、やば」

 折角の聖夜なのに、とかそんなことをぼやきながら身なりを整えて外に。中も外も、さして変わらぬ気温。暖房ほしいなー、と凍える身体に鞭うって、彼は街頭灯る道を、せかせかと駆けていった。

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