[短編(オリ)]クリスマス……? 3
クリスマスといえばツリーである。
ある地域では、最近盛り上がっているハロウィンが終わると、まるでお盆に紛れ込んできた悪霊を祓わんといわんばかりに緑と赤のコントラスト眩しく、ツリーを設置しきらびやかに飾り付けるのだ。
「緑!」
それを見て、ふと何を思い立ったか。
「きらきらだよ! きらきら!」
若草色の飛竜は自慢の肢体に、邪魔になること間違いなしの電飾をぐるぐると、余裕のある感じに巻き付けていた。
仕事帰りの彼女の彼はその様を見て、唖然とするばかりで、その手に持っていたものをさっさと置いて胸張る彼女に近づいた。
「おいおいおい、何やってる、シェーシャ。そういうのは誰かいるところでやれ。危ないだろ」
幸いなことに首を絞めたりだとか、血流が止まっている、なんてことはなく、自らをツリーだと称している。
「ああ、ああ、分かった。ツリーだな。ほら、飯にしよう」
彼の持って帰ってきたスペシャルディナー、とはいってもいつもより少しだけ豪華なだけの一食で、おまちかねはデザートだ。
箱を開けば、二つのショートケーキ。どっちにする、と彼が尋ねれば、どっちもおいしそうだと。どっちかだ、と強調すれば、悩んだ末の選択を、彼に運んできてもらう。
「メリー、クリスマス」
一日の締め括り。記念日だと、誰かがこうしたらいいと始めた一日。当事者とは無関係の誰かが、おいしい、と笑みを浮かべている。
記念日なんて、そんなものでいいではないか。
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