[短編(オリ)]クリスマス……? 1

「サンタさんに、何お願いした?」

 そういった話題になるのは、寒さ厳しくなるこの頃の自然な流れであり、

「もう届いてるよ。等身大ぬいぐるみだった」

 屋内を漁って、宝さがしをされて、赤と白のコントラストに身を包み、トナカイにアスファルトの道で助走をつけさせ、エンジンで空に飛び上がる幻想なんて初めからない者もいる。

 それを、親である、と言わないだけ、まだ親心には優しいのだろうと思われる。

「日向は、何がほしいの?」

 ふと声をかけられて、クリスマスプレゼントといえば、いつもお菓子の詰め合わせ、と苦笑い。

「えー、もっと欲張ればいいのに」

 特別な日なのに、特別でないものがプレゼントなんて。後日、事実として彼女の枕元に届くのは、いつもよりも少し多めの、お菓子の詰め合わせだ。

 別に彼女の家が貧しいわけではない。普通、に分類されるだけの生活をしている。だが、その生活は特殊なもので、それくらいのものが、特別でなくとも、特別な日の贈り物として、十分なものであるのだ。

「そんなんでいいのかい? いつもいつも」

 きらきらとした包装紙を開いて、中を覗き込むその隣から。

「もっとワガママでいいんだよ? もっと、オンナノコらしいもんとかさ」

 つまらなさそうな猛禽が、冷たい朝日を浴びていて、

「それを、バンガが言うの? 昨日はチキンだチキンだって、いっぱい食べてたくせに」

 そのけだもの、小さな身なりと涼しい顔をして大食漢。無表情の中にちらつく、満足げな記憶を重ねて、くすりとプレゼントの中身を、さっそくいただいた。

「おいし」

 あたしからも、なにかあげようかねぇ。

 結露まみれの窓にぼんやりと写るその姿を見つめながら、彼女は何やら思案し始めた。

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