[短編(市場)]指名手配6

「解決、したんですか」

 それは仕事中のこと。

「どんなやつだったんだ? 争いになったのか?」

 割り込むのは近くにいた、始めに答えた彼の兄で。

「いや、話し合いで終わったってさ。ひどいよねぇ、心配してたらこれだ」

 彼らに答えるのは、一時、奔走していた青竜で。

「肝心の内容までは知らないけど、お茶してたら現れて、いくつか質問してきた、とかどこの怪談だよって思うよねぇ」

 なんだつまらんと兄の方は持ち場に戻り、弟は、ご無事で何より、と微笑むばかり。

「つまりは、人探しをしてたってことですよね。魔女こと、ラクリさんを探して。そこまでして聞きたかったことって、何なのでしょう?」

 至極当然の疑問に、僕が知るわけないだろ、とふてくされている竜は青年にちょっかいをかけて、

「そういうことはさー、訊いても答えてくれないんだよー。答えたくないことがあるのは、仕方ないからいいんだけれどさー」

 損しかしてないよ、と愚痴をこぼす。ふよふよと踊る尻尾で身体を撫でられるも、弟は拒絶するでもなく、

「無事だった、それだけでいいとしようよ。いくら心配しても、何でもないことの方が多いもんだしさ」

 と諭してやる。

「腹痛で死にそうだ、とか、そんなもんだと思おうよ。ね、リエード」

 妙な例えを教えられたとしても、彼は弟を攻めつづける。だがさして気にしていない様子で、道端に寄せてあるその巨体の前で仕事を、見張りをつづけている。

「お前ら、何してるんだ?」

 と、いくらか経過して、通りがかったのは宝石商の一人。その手には商品ではなく、適当な食料が。

「あ、ギルだ」

 さして感心もなさそうな青の一方で、

「お、ギル! 一戦やろうぜ!」

 と目の色を変える兄。

 もちろん商人は、そっちの方は無視を決め込んで、近づいてくるものの適当にいなして、青から、先と同じ愚痴を耳にするのであった。


◆◆◆◆


 ふと思い付いた指名手配、というテーマ。

 不特定多数に、一個人の捜索を依頼するやつですね。

 このエピソードでは、ラクリさんを樹海以外の場所で見つけるために用意されたもの、という扱いなのですが、実際にはどうなのでしょう。

 指名手配のポスターってあちこちで見ますけれど、なかなか変化しませんよね。で、どうして見つからないのか、というテーマの動画を見て、思い付いたのがこんなのでした。

 まぁ、捕まってもおかしくはないかなぁ、という人物ですが。

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