[短編(市場)]指名手配5
青い竜が一泊してから二日、樹海の、問題の当人が居る小屋に戻った彼は、訪ね人の話をじっと聞いていた。
「個人か、あるいは小規模な、資金も潤沢ではない組織がやったんじゃないかって言ってたっす。姐さんは」
流石に仕事が早すぎない、と竜は聞いてみるも、最近は暇っすから、と使いの者は苦笑い。
「それに、姐さんの友人さんだ。後で請求がされると思うっすけど、割増じゃないのは、羨ましい限りっす」
当人が言うには、スカウトでなければ、所属したいときにはまず、客から始まるものだそうで。
「おかげですっからかんのまま、命だけは保証されてるって状態っすわ。ま、楽しいっすけどね」
へらへらと笑う使いに礼を述べて、報酬はまた、彼女を訪ねるようにと言い残して立ち去る。
「で、何か分かったの?」
それを見計らってか、二階から降りてくる橙色。階段の踊り場で立ち止まり、彼を見下ろす。
「やっぱりさー、なんか恨みを買ったんじゃないの? ほんとに覚えない?」
改めて考え込むまでもなく、
「昨日、考えてみたけど、ないわよ。それに、魔女が私だけ、と決まったわけではないし……」
そうだろうか? 首をかしげる青だが、ここにいる、という時点で、彼もまたそれに当てはまっている。
「いやいや、僕はそんなことしないよ? 健全に正当に真っ当に稼いでるし、交渉もお互いの利益を考えて売買してるからね?」
第一男だし、と付け加えると、
「あら、魔女裁判って男でも捕まるのよ?」
とにやりとする。
一般常識とはかけはなれた単語に意味を求めれば、なにその理不尽、と尻尾を揺らす。実際にあったことらしい、と付け加えれば、愚かだねぇ、と。
「なんにしても、用心はしておかないとね。少なくとも、大人数を相手にしなくていいのは、ありがたいけど」
さて今日の料理当番は、彼女である。いつものように火をくべ、鍋に水を。煮立たせ具材を放り込んで。もちろん、彼はそれを喜んで口にすることなどないのだが。
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