[ネタ]ナマモノの保存はよろしいですか?

「これがいいな!」

 触れてしまわぬよう鼻先で、山飛竜が遠慮がちに示されたのは、どこの部位からとられたものなのかよく分からない、大きな生肉。

「ああ、それだな。自分で運べよ?」

 財布の中身を確認しつつ答えるのはギルで、特に悩みもせず、自身の分の軽食も購入して、歩きだす。

「ここのお肉、おいしいよねぇ。辛くないし、あまり汚れないし」

 紙で包まれた自分の荷物を背中に乗せながら、ふんふんとご機嫌な様子。

「どうやって保存してるんだかな。香辛料もなけりゃ、凍らせてるわけじゃない。近場に農場もないってのにな」

 魔力乖離を起こさずに、食べられるよう加工されたクチナシの部位。乖離が一度始まると、みるみるうちにその形は崩れ去ってしまうのだが。

「知らなーい。でもおいしいからいいんじゃない? 早く帰って食べようよ!」

 それでも満腹という論理の前には、ただの詭弁にすぎない。食べ終わってからすぐに寝るなよ、と釘をさすギルに、えぇー、とシェーシャは反論するのだった。


◆◆◆◆


 生物と書いて凍った状態で運ばれる、なんてよくあるネタですが、なんでナマモノとセイブツは同じ漢字なのでしょうねぇ。カナで書けば解決しますけどね。


 さて、保存食といえば、腐らないようにさせるというのが常套手段で、その方法というのは採れるものによって変化するものです。

 香辛料に浸けるしかり、乾燥させるしかり、塩分濃度を上げて細菌の繁殖を抑えたり、窒素を詰め込んだり。

 近代的なものを除けば、いずれの手段をとるにしても、もとの味から変質するものなんですよね。

 それが、物資の氾濫によって民族料理として出されるようになったり、家庭の味に紛れ込んだりする。そうやって資本主義というものは色んなものを取り込んでいきました。

 さて、ではどうやってファンタジーでは保存食を作りましょうかね。畜産業をしている村とかならまだしも、王都に関してはどうやっていいものを出荷しましょうか?

 しかも保存のための材料も調達しないといけませんし、それを考えると、香辛料を使ってみた人は天才だったのでしょうねぇ。量を食べられたものではないけど、狩ったものに使ってみよう、だなんて。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る