[ネタ]もっと素直に
どうしたの、と突然きかれて、とっさに出たのは、何が、だった。
遅い夕食、味気ない食事。
今日はこんなことがあった、とか、子供がこんなことした、とか、そんな報告の場で。
「いや、なんというか、なんと、なく」
報告といっても大したことはしない。ただの日常会話だ。明日は遅いかもしれないとか、明後日は休みだ、とか。
「んー、そうか? 何か変な感じ、したのか?」
尋ねるということは、そう至る理由があるものだけど、それがなんとなく、で濁された場合、さてどうしたものだろう。
さっきまでの話を辿ってみても、特に変なことはない。帰宅してから、上着を脱いで、先に夕食。同僚の話とか、友人からメールがきたから返事をした、とか。
「……そう、いえ、気のせいだと思う。うん」
会話の中に、疑問の余地はないだろう。毎日のやりとり、だと思う。
いたたまれなくなったか、席を立って、先に床につくと姿を消した。なんだろうな、と首をかしげてみるものの、明日も早いのだから、風呂に入って寝てしまおう、と箸を進める。
赤い?
ふと視線を落とした先には本日の食卓のおかず。ハンバーグの断面には、赤いものがちりばめられている。ケチャップではない。もっと固形だ。
よくよく摘まんで見てみると、それは辛いやつだった。もしかすると、これはたまたま、辛くないやつなのかもしれない。
「どうしたの」
響くのはさっきの言葉。
辛いのは、苦手だ。なんでハンバーグにこれが入っているのか、なんてどうでもいい。急いで立ち上がり、その姿を求めた。
◆◆◆◆
素直、というのは正直に話せ、という用途で使われがちですが、こういった素直で、変化を示す方が、リアリスティックではないでしょうか。
まぁ、よくありますよね。病気で味覚障害とか。そういったものって当事者が素直であるからこそ見えないもので、第三者が認識することで発覚することも多いわけで。
そういったものを織り込むなら、どうやるのが面白くなりますかねぇ。もっと深刻なことになりそうですけれど。
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