[ネタ]ヒトにマギれル

 すれ違う人々。

 見ず知らずの赤の他人で、袖の縁以上の縁、例えば、ほぼ毎日すれ違うとかがあったとしても、その人がどんな人なのか、は知りようがない。あったとしても服装だとか、季節に対しての表情とか、今日は雨が降るのか、とかだろう。

 そう、たとえそんなささやかな縁があったとしても、それ以上の関係になることはそうそうない。こんなことが、起きていなければ。

「ハぁ、やっト見つけタ」

 たった今、道をふらふらと歩いていて、突然腕を引かれて路地裏に。人の気配がしない、かと思えば、引いてきた当人はそんな、心当たりもないことを言いながら、喋りづらそうな口で続ける。

「教エろ。今かラ、おまエを食べル」

 みるみるうちに裂けていく口に、肥大化していく身体つき。

「ドンな、きブんだ?」

 だが、目だけは変わらない。初めて会う、何かに腰を抜かしながらも、その変容をじっと見上げることしかできない。

 口から溢れた液体が、粘り気を持って地面に落ちた。

「教えろヨ。人間ノ姿ハ、たイヘンなんだカラ」

 ここでヒーローが助けてくれるならば、どれだけよかったろうか? 颯爽と駆けつけたマスクマンは、蹴りをかましてくれて。

「……もウ、いいや。ジャあな」

 人間だった怪物が、大口を開く。


◆◆◆◆


 人間ニナレルヨっていう設定はいっぱいありますが、なぜそうしているのか、そうできるのか、という説明をしようとしたとき、どうしたものでしょうか。

 なぜできるのか、についてはそういう生体である、と一蹴していいのですが、そうしている理由に道理をつけるのって難しい。特にエピソードか絡むと。


 例えば敵を一蹴するなら本来の姿の方が動きやすいでしょうし、暴れやすい。なぜ人間姿であることを選ぶのか?

 安易に人間になれてハッピーエンド、というのにもナンデジャって思ってる人も一定数いるのですから、色々と遊びがいはありますね

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