[ネタ]似たもの似ぬもの

 双子ですか、と麦わら帽子がしゃべった。

 そうなんですよ、と母さんが話すと、すっと顔が見えて、にこにことしている。

「どっちが、お兄ちゃんなのかな?」

 それは僕だ、とお互いに。するとどっちだと思いますか、と言われて、顎に手を当てる麦わらの人。

「うーん、どっちかなぁ」

 でもその目は悩んでいないようで、結局、どちらも選ばずに立ち上がってしまう。

「いいなー、そっくりな双子。私も、双子なんですけれど、姉は別居しちゃって」

 あらまぁ、と目を丸くしている母さんを尻目に、もう一人の僕は道端の茂みのもとでしゃがみこんだ。

「しかも、全然似てないんですよ。一卵性じゃなかったみたいで。元気かなぁ」

 僕はといえば、麦わらの人の話が気になって仕方なかった。ケンカしたの、と訊いてみる。

「いや、ケンカで別れたわけじゃないよ。ただ、ここに住みづらいってだけで、あの子は、元気に過ごしてるんじゃないかな?」

 ならよかった。

「ありがと、お兄ちゃん」

 ヒソヒソ声は、あっちには聞こえなかったみたい。

「暑いから、気をつけてね」

 それから別れて、また歩きだして、角を曲がる。

 なんだか気になって振り替えると、麦わら帽子が足取り軽く、でも足音もなしにふわりと消えた。


◆◆◆◆


 親子だから、双子だからそっくりであることが自然ですが、片方が異常な存在であるっていう展開ってありますよね。

 もちろん一卵性双生児でなければ似ないですし、親子だからって似ていないなんてこともあるでしょう。しかし、多くの場合はそういう存在であれば、似ている、名残がある、という形で描かれることでしょう。


 でも、特に双子って全体を見れば多くはないんですよね。仮に人間が双子の出生率が高いと仮定したとき、どのようなことが起こるのでしょうか?

 少なくともドッペルゲンガーなんていう話は、同じ顔の人が六人はいる、とかになるでしょうし、商売は二着セットが当たり前で、ペアルック自体も珍しいものではなくなるか、はたまたそうあるべきという考え方がなくなるのではないでしょうか。

 でもやっぱりなー、双子の片方は人間辞めてて欲しいなー、とか考えちゃいますね。うふふふ。

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