[日記]晴れて、ときどき雨が降る

 真夜中。ゴォと遠くに聞こえる音が、時間差で手元を狂わせる。

 バサと人間には備わっていない、移動する雨宿りスポットは、風に煽られながら、なおも細かな雨粒から私を守ってはくれない。

 普段ならば、ぐっすりと眠り、ときたま目が覚めるかもしれない時間。遅すぎる食事を、雨の中で済ませて、自身の不運を呪うしかない。

 今日やるはずだったこと。今日、完了するはずだったもの。これを翌日以降に回されたというのだから、機嫌も悪くなる。

 もちろんそれらは、設定された期限があるわけではない。あくまでも、自分がやらなければならない、と勝手に思い込んでいる愚かなことだ。実を結ぶことなんてそうそうないことは知っているし、なら途中で折れてしまったって別に構いやしない。

 残るのは、中途半端だったなぁ、と思い返すことだけ。そこに後悔が残るかは、また別の話である。

 しかしまぁ、やらない後悔よりも、やる後悔。いっそのことやり切ってしまった方が、世の中が、これから先、楽なものなのだ。

 やがて住居にたどり着いて、天井を見上げ続けた。

 節目なんてものを数えることなんてしない。ただ目を閉じ、じっと肩の力を抜く。呼吸だけは止めずに、スゥ、スゥと深呼吸をし、体勢を時々変える。

 雨の音。風の音。ただ静かに、この狭い世界を打ち鳴らして、反響する。

 目の奥が、蠢いている。まだ動けると、思考が活発になる。

 これをして、あれをして……いつまでも、めぐりめぐるのは、ただ自分が生きている証拠である。


 目が覚めると、朝がきている。外を見れば、雨雲どころか、光が差し込んでいて、ちらりと見ていた天気予報の大ハズレめ、と悪態づく。

 さぁ、閉幕はどこだ。最後までやってやる。

 どうせ私は、愚かで、馬鹿で、ただの人間だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る