[短編(オリ)]破壊する者

 全て壊してしまおう。

 そう考えた者がいた。

 公園も、家も、像も、人も、生物も、大地を、国を、この星、全宇宙を。

 いや、その頃には宇宙、なんて考え方はなかった。正しくは、地獄も、天国も、といったところか。

 なぜそう考えるに至ったかといえば、いたって単純なものであった。手にしていたならば、わずかな意思があれば、それ誰にでも起こりうることである。

 なんでも壊せたからである。

 初めは虫や石だった。

 単なる幼心は虫を摘んでは潰して、動かなくなったことを、死として、壊れたとして認識する。だが生きてはいない石は、自分の力だけで壊せることなど、そうそうない。あっても、割れていたものをこじ開けるようにして達成する、というものだろう。

 だがそれは幼くして、たやすく壊してみせた。手を捻る、潰すといった感覚で、壊して見せた。

 できる、という感覚、実績というのは恐ろしいもので、次の標的を、目標を、何気なく目指そうとする。すなわち、それは次から次へと、目につくものを壊し始めた。

 そして、世界というものが、冥界や天界があるという教えを信じて、旅にでた。ただ壊したい。形あるそれを、ひたすらにそうしたいという衝動に駆られて。

 だがその旅が終わったかどうかは分からない。なぜなら誰もそれにはであっていないのだから。

 壊せるものを探しに、この世から離れたのか。あるいは、自分自身を壊せるか試してしまったのか。その真相は定かではないが、面白いことがある。

 旅立と同時期に、破壊と創造の神話があちこちに点在しているのである。もしかすると、関係があるのかもしれない。

 あくまでも、一説だが。


◆◆◆◆


 具体的な手段を言わないことで、幻想的なものにする。それは曖昧な話となりますが、まことしやかに語ることで、あなたが付け入る、想像する余裕を与えます。


 さて、絶対的な力みたいなものがあるとき、持っている者は何をするのでしょうか。何を悩んだりするのでしょうか。

 凡人には思い至らないことがいっぱいあるんでしょうねぇ。

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