[短編(市場)]見ず知らずの手紙

 こんにちは。

 突然の、見ず知らずの誰かからのお手紙になりますが、どうか読み進めていただけますか。

 配達員の方々に、あなたへ届けてほしい、とお渡しした結果、今、あなたがこちらをご覧になっていることかと思います。


 青の体躯に、一目惚れしました。

 いきなり何を言い出すのかと思われるかもしれませんが、もしよければ、お話をしたいです。

 仮にお話をしてくださるのなら、同封してあるアクセサリーを付けて、こちらで待っていてください。時間は……


「ヤバイやつよ、それ」

 読み上げ切る前に、ぴしゃりと赤が。

「会ったこともないやつに一目惚れとか、絶対ないわ。それなら直接近づいてこいって話でしょ」

 でも、とどこか恥ずかしそうな青は、じっと待ち合わせ場所に目を落としている。

「好意を向けてくれてるのに、無下にするのはどうかと思うんだけど」

 行きたい、という無言の主張に、対する赤は絶対にダメだと繰り返す。

「いい? まずそのアクセサリー。なんで同封されてんのよ。市場であんたくらいしか青竜なんていないのに、そんなもの、必要?」

 爪で指差されたものは、どうみても安物のアクセサリー。

「そもそも、着飾ることのないあんたたちにそれを贈るってこともおかしい。あんたなら肉とかフライもらった方が、惹かれるでしょ」

 確かに。

「あんたさ、断れない性格だって見抜かれてんのよ。そこは貧困区近くだし、身ぐるみ剥がされることになるんじゃない?」

 それは危険なものだ。そう断定される一方で、後ろ髪引かれる思いは、彼のなかで燻っているらしく、尻尾が地面をはたいた。


◆◆◆◆


 いきなり知らない人からの手紙が来たら、どうします? 会って話をしたいだなんて。

 もちろん、断るというか、無視するのが道理ですね。しかし面と向かっていないにも関わらず、断れない性格の場合、どうするのでしょうか。


 まぁ、性格にもよりますけどね。無視したことで何か重大な過ちをしていないかと不安になる人もいるでしょうし。

 しかし思っている以上に、世の中というのは悪意に溢れているものです。できることなら、そんなものはない方が、生きやすくはあるのですけれどね。

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