[短編(オリ)]チケット
こんな話を聞いたことはあるだろうか?
あなたは歩いていて、色んな人とすれ違う。もちろん顔なんて覚えてないし、服装なんてぼんやりとしか映らないはずだ。
そんな折、ひらりと視界をかすめるものがある。視線が勝手にそれを捉えて、釘付けにする。
それは、切り取り線のあるチケットであるようだった。先ほどすれ違った人と、そう距離も空いていまい。そんな良心がチケットを拾い上げさせて、くるりと振り返る。
だが、先ほどの服装の人はいなかった。特別人通りも多いわけではないが、まばらなほどだが、その人はいなくなってしまっていた。
近くに交番があったろうか? そんなことを思うだろう。だがチケットを見てみると、それはたしかに、チケットであるのだが、何か寂しさを覚えることだろう。期限も、何のチケットであるのかも、分からなかったからだ。
まるで紙だ。半券にすることのできる、紙だ。先ほどまで、そうだったかと首をかしげるくらいには。
こんなものを届け出ても、人は現れないだろう。あなたはそう考えて、ポケットにつっこんだ。
そうしたことも忘れて、夜。服を脱ごうとしてチケットの存在を思い出す。もちろん捨てるだろう。誰かにとっては貴重なものでも、誰が見ても無価値と認められるようなものだからだ。
やがて就寝についた後のこと、あなたはこんな夢を見ることだろう。
いらっしゃいませ、の一言と共に。
◆◆◆◆
最近はチケットも電子化が進んでいますが、こういう偶発的に未知に遭遇する、というシチュを作るなら、アナログですよね。
たまたま手にしたものが、実はこういうもので、それにまつわる騒動に巻き込まれていく。王道ながらも、あったことは現実となるか、嘘となるか、など、エンディングは多岐に渡ることでしょう。
仮にこういうのを電子的にするならば、抽選で当たりました、とかそういう表現にしかならないんですよね。某論理パズルゲームの幸運な入学生みたいな。
なんでしょうね、魅力に欠けるのは。ドラマチックに入手の過程を描けないからでしょうか。単に手紙が届いた、だけでも色々と書ける気がするので、そういうことなのかなぁ、とか。
先日の、過程のインプットがないことに通じるのでしょうか。あるいは、主人公、主観者の感情の問題なのか……色々とありそうですね。
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