[短編(市場)]のらりくらりと3
世界樹を背後に建っている建物というのは、非常に多い。微妙に角度をずらしたり、窓を見やれば樹が見える、なんていうことも珍しくなく、立派な観光資源となっている。
ところがいざ、それが目の前にあるというのならばどうだろう。
「……」
昼間は世界樹が日差しを遮ってしまうここでは、朝と夕に天気関係のやることを済ませてしまうことが多い。しかし、このような至近距離では、自然と室内はじめじめと暗くなってしまう。
「……」
王という立場にありながら、彼は横になっていた。とろんとした眼差しは柔らかいベッドに、半分は埋もれている状態である。
「王、もうじき昼間ですぞ」
正面でそれを、腰を下ろして見つめているのは獅子である。
「なんで、ここに玉座を建てたんだろう。知ってるかい、リドル」
お互いにがびがびな毛並みを認めるが、仕方ないでしょう、と。
「レミーから聞いた話では、ここが、市場のなかで最も古い建造物とのこと。権力とは縁遠いですが、世界樹の近くに置くことで……」
もういいよ、と獣の王が寝返りをうつ。
「そういうことじゃなくて、なんで日当たりの悪いところを選んだろうって話。幹に近い以上、日照時間は極めて短いここを」
たしかに、と側近は首をかしげた。
「私の故郷では、村一番の強者がいい場所に家を建てていましたね。かつての王は、日差しが苦手だったのでしょうか」
一つの仮定に、どうでもいいことだけど、と締めくくり寝息を立て始めた王に、側近は容赦なく牙を剥く。
◆◆◆◆
でっかいオブジェクトの根元近くに住居があると、日当たりは非常に悪くなりますね。
なので市場は安定した気候とはいえ、寒かったりしそうです。いつかも同じ話をしたような気がしますけどね。
さて、日当たりが悪いといえば、寝起きが悪くなりますね。曇りの日とか、雨の日とかも。じめじめとしてテンションが上がらないなぁ、とかそんな日はのんびりと過ごすのが楽しいものです。
時間に終われず、ただ自分で自分を追いかける。はたと気づいたときにはこんな時間だと慌てるのもまた醍醐味ですね。
しかしカル様はそうではないようです。渓谷なんて日当たりがよさそうには思えませんが、元王族である以上いい場所に部屋を持っていたのでしょうか?
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