[短編(市場)]のらりくらりと1

 世界樹を中心に見て、市場の貧困区の方角には樹海が広がっている。

 その中にはぽつんと小屋がある他に、背の低い草の生えている広い空間がある。そこは、かつては木々の生い茂る場所であったが、小屋を建てるために伐採したためにできた場なのであった。

 晴れ渡る空を紅い瞳で見上げ、紫の衣が汚れることもいとわない、だらんと四肢を広げて寝転ぶ紅竜が一人。

 尻尾にも力を入れていないらしく、時折ぴくりと跳ねるくらいである。

 大きな欠伸。普段ならば寝藁を背中に、座って眠るのが彼女たちのスタンダードだが、今は弱点である腹部を派手にさらして、わずかに差し込む日差しにまどろむ。

「……」

 眠い。けど眠りたくない。眠い。でも雲を眺めていたい。そんな葛藤の見え隠れするまばたき。ザラザラと尻尾で草を薙いでも、睡魔は相変わらず襲ってくるらしい。

 ならば一思いに身体を動かしてみてはどうだろう。目が覚めるには違いない。だが彼女がどうしてここにいるのかといえば、ぼうっとしたいから、であった。

 たいそうな理由なんてものはなく、口を半開きにして、ただぼんやりと景色に意識を委ねる。腹は満ちているし、本を読むのも疲れて、魔法をあれこれする気になれなくて、眠るのはなんだかもったいないと感じて、だったら何ができるかといえば、いたずらに過ごすことくらいしかないだろう。

 ただいたずらに。惰眠を貪るよりも、怠惰に身を委ねる。

 くぁっと欠伸をすると、口をしっかりと閉じる。次第に重さを増す目蓋が瞳を覆い隠して、ゆっくりとした呼吸に変わった。


◆◆◆◆


 なにもしたくない。そんなときはなにもせずに天井でも見上げてましょう。

 眠るよりも怠惰なことな気がしますね。時間を水槽の水に例えるならば、眠りは水で、明日のための別の水槽を洗うようなこと、怠惰は排水の栓を抜いてしまうような。

 実際はどうなんでしょうね。なにもしないことで思考が整理されたりもするそうですが。


 実際にそういうときって、大抵体調が悪いんですよね。作業を始めると頭痛がするし、息をつくと全身がどっと重くなる。寝ればましにはなるけど、持久走はできない。

 そんな不調を感じたら、あまり無理せずに行きましょうね。病院はもちろんのこと、休息も大事ですよ。

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