[短編(市場)]いつかのことを掘り返す
機嫌直せよ、と向かいの同居人の説得を試みるのは、デイル。
「……気にして、ない」
いつものようにうつむき加減の相手はクトゥール。さっさと召し上がってくださいね、とテーブルに皿を乗せるタマモは、台所に行ったまま戻ってこない。
「いーや、絶対に気にしてるな。いつも以上に口数が減ってる。俺の前だとしゃべるだろ、お前は」
こうして表に出て、共に食事をすること自体が珍しいのだが、獣がちょうど、親愛なる相方と共に帰ってきたために起こっていることである。
弟のインスは夜回りで帰ってこないことを聞いていたタマモは、二人にさっさと食事を済ませるように勧めたのだった。
「……あれは、違う」
いや、例え話だって、とデイル。新人研修の座学にて、ちょうど弁当を届けにきた彼を部屋に引き込み、彼が犯人であった場合にどうするべきか、とデイルは生徒に問うたのだ。
「室内にお前みたいなのが血気盛んな状態で立て籠ったら、状況観察よりも、冷静になるように説得だろ? 俺だって分かってる。そんなこと」
だが交渉力を磨くことは難しい。鍛練を重ねることなんてそうそうできないからだ。せめて犠牲を少なくするために、観察眼、という解にしたのだ。
仮に興奮状態が続いたとしよう。彼には武器があり、それを振るうことができる。抵抗をしないようにしている人質がいるのだから、もしかすると、交渉なんてものをすっぽかして凶行に走るかもしれない。
「あと、追い詰める、だめ」
ああ、ああ、と面倒そうな返事をしたところで、デイルの食器は空になってしまう。
「……分かってるなら、いい」
まだ半分も残っているというのに、デイルとタイミングを合わせて立ち上がる。足りないんじゃねぇの、と青年は尋ねるが、十分だ、と獣は自室に姿を消した。
◆◆◆◆
ゲーム向けのエピソード概要を作っています。あとはデイルとクトゥールコンビのものだけでひとまずは終わりなのですが、インスデイル兄弟のエピソードがなかなか作りづらいですね。
もともと市場では名前のあるモブの立ち位置ですからね。いざ何かをやろうとすると作りづらいのは当然のことでしょう。
他の出演予定のキャラに関しては、紅青、ギル、シェーシャ、テラーとテレアを登場させますが、比較的楽ではあるものの、台詞をメインに会話を作るのは苦しいです。難しいじゃなくて、苦しいです。
文字数に制限がなければなぁ、と思うのですが、それはコンテンツが異なるので無理な話。
今日は兄貴のエピソード概要を終わらせましょう。
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