[短編(市場)]彼岸の迎えに怨霊退散2

「それで、こんな大量に買ったのをどうするんだ、シェーシャ」

 本日休業、という看板を出している宝石店の裏手にて、椅子に座って空色の視線の先には、籠いっぱいに入った包み紙が、五つ。

「配るの! そこに来る子たちに!」

 うずうずといった様子の山飛竜の身体には、紙を細長く切ってつなぎあわせたものを首に巻き付けて、頭や翼には、本来の用途とは異なる包帯が。いずれも、真っ白だ。

「あぁ、まぁ、好きにしたらいい。だが、時間になったら、出かけるからな? 忘れるなよ」

 そっけない、いたって真面目な台詞を吐く土竜だが、その姿はいつものシャツではなかった。

 内側は真っ赤な黒い、襟の立っている外套、その下には、安物ではないだろう正装で着飾り、口元には真っ赤な紅を塗っている。

 こうした方がいいんじゃない、とシェーシャが塗りたくったそれは、顔中に塗られた痕があったが、今はほとんどが擦れた痕がある程度になっている。

 と、シェーシャは籠の一つを咥えて外へと繰り出す。ともすれば戸締まりなんてそっちのけでのしのしと姿を消す。

「さ、仕上げをするか……」

 邪魔そうな衣装を身に付けたまま、椅子ごと身体を反転させると、ギルは作業机に向かい、時折外を見やりながら仕事を進めた。

 ちょっと待っててねー、と恋人の気配が、外と中を往復する。子供がいっぱいだねぇー、と楽しそうに小道具を運ぶ山飛竜は、衣装がとれかかっていても気にしていない。

 商品の一つを仕上げたところで、ギルが振り替える。椅子から尻尾を外して、ちょうど最後の籠を運ぼうとしている彼女に告げる。

「そろそろ終わりにしないと、ラクリたちを待たせるぞ」

 だがこれで最後だからと、小走り飛竜は外に飛び出していった。

 よくよく外を見やれば、ここらでは見ない少年少女もおり、その姿は着飾る必要もないほど、汚れていた。

 追い返すこともせず、純粋に楽しんでいる彼女から落ちた衣装を拾い上げて、ギルはじっと、微笑んでいた。


◆◆◆◆


 お菓子の配布をするなら彼らかなぁ、と。ギルの財力とシェーシャの行動力があればなんとかできるのでは?

 むしろお菓子をもらいに行きそうですが、各地を傭兵時代に旅した身。流石に異文化の詳細を聞かずに都合のいいところだけを実施する、なんてことはしないでしょう。

 ちなみにシェーシャはマミー、ギルは吸血鬼、ラクリは魔女で、リエードはなんだろ。なんかそれっぽいやつ!

 なんか最近、リエ君の扱いが雑すぎるなぁ。ゲームでもそんな感じだし……。

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