[短編(市場)]彼岸の迎えに怨霊退散1
ジャラジャラと、歩を進める度に鳴るのは首にある木簡のようなもので、それを身に付けるのは青い竜。
「……ねぇ、なんで僕、こんななの」
だが当人は不満げで、眉を寄せている。その頭には普段とは違い、角らしいもののついた黒い帽子。背中にはぼろぼろに見える布が被せられている。
「なんか、そういうのを身に付けてたらサービスするっていう店があるって聞いたから」
彼の先を行くのは、いつもの衣に人間の長髪を模したウィッグを乗せている紅竜である。
「ラクリがそんなことで、実行に移すやつとは思わなかったよ」
はぁ、と耳障りな音をどうにか無視しながら、周囲の人混みを見やる。
彼らもまた、そのサービスというのに興味があるのか、ちらほらと見慣れない衣装に身を包んでいる姿が見えた。なんでも、秋という地域で行われる収穫祭なのだとか……市場ではそういった文化がいつの間にか潜り込み、浸透していることは珍しくはないが、初めて参加してみるとなれば、その居づらさに敏感になってしまうのも当然のことである。
たまに出店に置かれている、頭を模した野菜が置いてあるが、それもまたその地方から輸入されてきたものだという。
「怖いよなぁ、あいつ」
夜になれば中に明かりを入れて、光らせるというのが習わしらしい。だが見つめていると、中からぎょろりと、何かが見つめてきそうで、彼は視線を反らして、同居人を追うことに努めた。
「ほら、ここ。ギルが教えてくれたの」
いつの間にかたどり着いた目的地に。さっさと済ませようと入店したが、出入り口にて彼の足が止まった。
「被り物にびびってんじゃないわよ、リエード」
◆◆◆◆
ハロウィンは西洋のお彼岸という話を思い出しながら、市場のメンツにあれこれ着せてみたらどうなるかなぁ、とか考えました。
でもラクリさんは標準で魔女だから、人間の真似でもすればいいんじゃないかなぁ、と頭に乗せるだけになりました。実は何年も前にハロウィン用にラクリさんの絵を描いたんですが、もう何年前だあれ。
ひとまず第一話では紅青の二人で。あくまでも仮装ではなく実利を求めて仮装をしています。リエ君は乗り気ではないようですが。
そもそも、彼は着ませんからね。帽子は被りますけれど、衣装なんてものをラクリさんが買ってきて、市場に出るわよ、なんて引きずられれば、そりゃ乗り気になりませんて。
さて、明日は誰を取り上げましょうか。
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