[短編(オリ)]勇者裁判
その日、彼は帰ってきた。
誰もが彼ではないと口にするが、それもその通り、出立した彼は死んでいて、代わりに勝利の凱旋を果たしたのは、誰も知らない彼であったためだ。
彼を迎えた王は、明日、彼を裁判にかけると宣言する。その話は瞬く間に広がったものの、貴族が直接出るような内容であり、一般市民は傍聴すらできなかった。
もちろん、貴族の傍聴席は満席だったが。
間違いないか、と法そのものである王がじっと見下ろした。
「何度も言っています! 旅の途中で、勇者は死にました! 私はその形見を身につけて、魔王を倒したのです!」
そんなわけあるか、と唾を撒き散らすのは、かつて勇者と共に旅立った貴族の娘の、父親。
「これは王族にしか身に付けられんもの。大方、嫉妬でもしたのだろう? 卑しい身分の者が、息子を羨んだのであろう?」
否定の言葉は、いくら述べても意味がない。
なぜなら、彼への刑はすでに確定しており、耳を傾けなければそれが覆ることはないからだ。
「それに、伝説によれば、勇者が亡くなれば、これはたちまち消えて、ここの宝物庫へと帰ってくるのだ。おまえが持ち帰ったものも、偽物なのであろう」
そう、彼は処刑される。勇者を看取ったらしい彼は、その形見を持ち帰ったというのに、感謝も労りもなく、罪を被せられて、殺される。
「さぁ、もうよかろう? 認めよ。息子と許嫁を殺害し、勇者へと成り代わろうとした罪は、重い」
違うと繰り返されようとも、親族たちの言葉は、思い込みは変わらない。
変えられるとすれば、何が必要だろう? 私は彼がいつ逃げ出しても取り押さえられるよう、じっと見つめることしかできなかった。
◆◆◆◆
そういえばカクコンの募集要項が出てましたね。12月からでしたっけ。
で、勇者裁判というのを思い付いたのですが、いかんせん当時の裁判の知識がない。もちろん論理的に情報を補ってそれっぽく作ることはできるでしょうが、さてどんなどんでん返しを用意しようかと思いました。
概要は先述の通りです。そこからどう展開していくのか……書けたら参加しましょうかね。
さて、書くだけの余裕はできるのか? それは今後のお楽しみでございます。
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