[短編(市場)]夏の味5
どうぞお召し上がりください、と艶のある二本の尻尾がふわりと舞う。
魔法の力によって食卓に乗せられた二枚の皿にはそれぞれ、見るからに暑さを感じさせる、赤い粒々のまぶしてある肉がいくつか。
それを目前に、玉のような汗を浮かべている二人のうち、一方は嬉々としてフォークで口に運ぶ。もう一方はじっとそれを見下ろしていて、皿を運んできた狐は坊っちゃん、と首をかしげる。
「早く召し上がってください。体調が悪いのですか?」
いや元気だよ、と返す少年は、しかし食事に手をつけようとはしない。ちらりと兄の姿を見れば、赤くなった舌を外気にさらして、さらに大きくなっている汗が流している。
「ねぇ、タマモ。なんで今日に限って香辛料漬けなの?」
今日は、市場は珍しく酷暑であった。倒れるものもしばしおり、それの救護などに奔走していた騎士である彼らを待っていたのは、鎧を外せ、という指示と、好機と見たのか、犯罪の山だった。
結果、鎧はないにしても炎天下での奔走を強いられ、仕事あとの今くらいは少しでも涼みたい、というのが弟の主張なのであった。
「なんで、と申されましても……保存がきくとはいえ、そろそろ処理しないといけませんでしたし」
困り顔の彼女に助け船を出すのは兄の方で、
「インス、知らねぇのか? 辛いもの食って汗を流した方が、涼しく感じるんだぞ?」
早くも平らげてしまっている。
それに弟も折れたか、いまだに汗を吹き出しながら食事を始める。見届けた獣は兄の皿を下げ、台所へと姿を消した。
「辛い……暑い……」
だが一口目でダウンした少年に発破をかけた兄は、動かない弟に、どうしたもんかと首をかしげた。
◆◆◆◆
夏はカレー、なんていうのは企業の広告戦略でしょうか? むしろ暖まるものは冬に食べたいですよね。あれ、そうすると鍋になってしまいますね。なら夏の醍醐味アウトドアとか?
ということで、暑いときに辛いものを食べて元気に、ということもよくありますよね。もしかしたら日本特有の刷り込みなのかもしれませんけど。
私にとってカレー、およびシチューというのは季節関係なく、以後数日の調理をさぼるためのメニューになっているのですが、季節らしいカレー、というのを作ってみるのもいいかもしれませんね。
そうなると夏野菜……ちょっと変化球が欲しいですね。けど夏野菜なんてナスとか南瓜とかしか知りませんし。
何かいい具材はありませんかね?
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