[短編(オリ)]道中這うもの見届けて
なんや、と首をもたげて、ちろり、ちろり。
歩道の真ん中、左右反転のS字を描きながら、車道脇の茂みから顔を出している、長い長い生き物。黄色、あるいは黄緑っぽいような、どっちつかずな色をしているそれは、なんや、と見上げてくる。
そりゃあ、自転車を近くに停められたら驚くのは自然なことだろう。自身の体長とは張り合いがあれど、体高では圧倒的に劣る巨人に、見栄を張っても仕方ない。
「いやな、そこにおると牽かれるよ?」
まだ道半ばなのか、一応自転車の通れるスペースはある。しかし当人は日差しを浴びながらぷいとそっぽ向く。
「渡りたいんやったら、はよう渡ればええのに」
彼、あるいは彼女の、かつて向いていた方向には、その体ならばするすると上っていけるだろう塀と、柵。むしろこっちから出てきて反対側に渡ろうと考えたのだろうか?
いや、彼らの視線の低さはそこまで見渡せないだろう。それに彼らは光が差しているかどうかくらいでしか、目を使っていないというではないか。
獲物をさがして、ちろちろり。ゆらりするする、ちろちろり。いずこ、いずこ、今日の飯。
視界の悪い彼らが、見るよりも嗅ぐ方向でものごとをみる以上、たまたま茂みにたどり着いてしまったのだろう。そして車道の方は忌避感があるから、戻ろうとしていたところ、私が通りがかった、と。
しかし、長い体だ。こうも長くすることによるメリットとはなんだろうか? 手足が邪魔だと引っ込めていった彼らは何を考えていたのだろうか?
よくよく考えてみれば、脚のある彼らの仲間も、その手足はとても細い。前腕も二の腕も、とても細い。そう考えると、早いうちに鱗で自由に移動する手段を選んだのが彼らなのだろうか? のっぺりとした顔が、私に危険はないと判断したのか方向転換する。
それでも手足がある方が、脱皮とか便利だぜ、というのが、もう一方の分岐点なのだろうか? いや、指とかに皮がひっかかってますやん。
するすると長い体を、公園の茂みに隠した彼か彼女は、あっという間に見えなくなってしまった。
「意志疎通とれへんの、つまらんわぁ」
自転車に再びまたがって、漕ぎ出す。ちょうど、尻尾も茂みに紛れた。
◆◆◆
先日、野生だろう、150程度のおそらくアオダイショウを見かけました。そのときは、妙に疲れていたため、立ち止まらずにスルーしましたが、彼はどこへ行ったんでしょうね。体力に余裕があれば、観察したかったなぁ。
自転車で近くを通ったとき、ヒエッと頭をよそに向けてましたね。元気にしてるでしょうか。
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