[日記]争いの示し方

 挟撃を受けた主人公は、丸腰の仲間に唯一持っていた武器を手渡し、自身は鎧を身に付けていることを理由に、戦闘を再開する。


 ……これはシチュエーションとして問題はない。動機に違和感はないし、自身は武器がなくともどうにかできる、という気概があるならば、そういう選択をしてもおかしくはない。

 しかしそこから始まる戦闘が、なんというか、地味、というよりは現しづらい。

 短剣一本しかない中、挟み撃ちに遭った彼ら。幸いにも、その世界の魔物は武器による攻撃が有効打となりづらいため、まぁこれでいいかと思い彼らの動きをそのまま落とし込んでみたが、これが地味だ。


 効果音ばかりが派手な魔法なんてものはない。同時に繊細で相手の不意をつくような魔法もない。新種でこそあるが、敵は不意をついた以外は特別なんでもないやつだ。

 体術を用いて敵の弱点を打つ、がこの物語でのスタンダード戦術だが、さて、いかにも地味だ。もっとも武器がない、という時点で丸腰の彼が得意分野で魅せることはできないし、そうなってしまうのも至極当然の結果である、と受け入れるしかない。


 では、読者を引き込む戦闘描写とはなんだろうか?

 まず前提として、実力は五分五分であることが絶対だ。実力に差があることを見せつけるだけならば、相手の狙いを見切って反撃に出てしまえば、それっぽいシチュエーションになる。

 これは魅せるというよりは、示す、だろう。戦闘にさえなっていない。

 もちろん圧倒的に相手が強く、挫けずにいたら覚醒するなんてものもあるだろう。これもまた、示す、に分類されると思う。


 では五分の戦いは? お互いに拮抗していると示すには? 鏡を使えば、それは確かにつかない決着を演じることは可能だが、読者は一人芝居に興ざめすることだろう。

 私なら、それぞれの強みを押し付けようとしつつ、それが相手に有効かどうかを見極めるような描写をすればできるのではないか、と考えている。

 もっと簡単に言えば、有利と不利の駆け引きをさせればよいのではないだろうか?

 例えば地味だと言っていた先のシーン、敵の弱点は分かっているので、そこにどうアプローチをしかけるかを描写する。一方でそれを阻もうとするシーンもざっくりながら描くのだ。

 もちろん三人称なので、個人の思考を入れないように注意する必要はあるが、一つの躍動感を表す手がかりになるかもしれない。

 よし、今晩さっそく見直してみよう。

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