[創作論]GW二日目-伝承、伝説、つながる点-

 一国の王は、一人の勇ましき青年を呼び出した。今日の仕事に抜けが出るとまずいのだが、と抵抗する彼に、もちろん、王は一大事なのだと拒否権を与えない。

 建設完了の遅延金と補償金を国から出すことを条件に、青年および、その雇用主は納得した。

 そうとなれば青年は真面目だから、国王のもとへと律儀に向かう。王を目の前にして、肝の座っている青年はいつもと変わらぬ表情で跪く。

「おぬしは、凶兆の星、というのは知っとるか?」

 首を横に振った。

「それがな、昨晩現れた」

 いわく、国が滅ぼされる前兆であり、星読みがそれを見つけて十日もすれば、災いが姿を現し、この聖域へと侵攻するというのだ。

「そこで、我が父から聞いていた話なんだがな。この災いとやらを封じ込めることができれば、凶兆の星は姿を隠し、国は生き永らえるというのだ」

 はぁ、と青年は信じられないといったふうだ。

「この国の中で、もっとも勇敢かつ、聡明なおぬしに、この役割を与えたいのだが、引き受けてくれるな?」

 だが眼光の鋭い一国の王。ここまで話されてしまっては、断れば処刑は免れない。納得こそしていないものの、青年には、

「喜んで、引き受けましょう」

 選択の余地など、なかった。


◆◆◆◆


 過去のことを引き合いに出して、それに倣おうとする。現実でもよくあることだと思います。


 ではその過去の出来事と今を、どうやって同じものである、とするのか。これにはいくつかパターンがあります。

 一つは人智の届かぬものが示している、というパターン。星や、甲羅を焼いた割れ目を読む、夢といったものですね。

 一つは言い伝え。神に祈ったら、治まった。あるいは、理由は分からないが、こうしたら沈静化したというパターン。

 他にもあるでしょうが、思い付きませんでした。


 物語においてこれらを辿ることは、分かりやすい道標であり、目標が明確になります。読者も、どうすればゴールなのか、どんなハプニングが起こるのだろう、と予想しながら物語に入り込むことができます。

 そして時に道標は主人公たちを裏切って、窮地に追いやる。するとどうなるのか、顛末を見ようと読者はページを送ってくれることでしょう。


 物語というのはご都合展開の塊です。

 しかし読者にそれを勘づかれてはいけません。

 思い付きでなんでもかんでも詰め込むとそれは一層のこと色濃く見えてしまいます。なら書き始めるよりも先に、こういった内容を盛り込んで組み立ててみる、ということから入ってみるのも、一つの手なのではないでしょうか。

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