[短編(ネタ)]GW三日目-突然の自己紹介-

「我が名は、四天王が一人!」

 そこで一呼吸。

「ガルっガンっチュアァ!」

 そして雄叫び。

 彼の目の前には各々の得物を支えに、どうにか立ち上がろうとしている者たちがいる。

「貴様ら人間は、我ら魔族には、けっっして、勝てはしないっ! 大人しく諦めよ」

 腕を組み、どうどうとした武人は続ける。

「歯向かわないのならば、命までは奪わん。おとなしく、慎ましく暮らすがいい」

 にやりともしない四天王は口を引き結び、火を思わせる赤い顔は、明らかに人間ではない。

 一方、息を荒げている、敗れたのであろう少年が顔をあげて、口にする。

「四天王、ガルっガンっチュアァ! ひとついいか」

 からかうように先の声真似をする。

「あ、ごめん。我の名前、ガルガンチュアね? 雰囲気だすために促音便使ったの。わかる?」

 武人の佇まいを崩し、滑らかにまわる舌。

「ガルっガンっチュアァ! なんで自己紹介するんだ? 恥ずかしい」

 ぼろぼろの装備では、四天王には勝てる見込みはない。

「ガルガンチュアね? いや、カッコつけてるだけ。勝者の宣言ってやつだよ。そりゃね、弱い、弱すぎる! って言いながら首を落としてもいいよ? けど魔王様がね、撮影してるの。全年齢向け世界侵略プロモーション作っててさ、素材が少しでも欲しいっていうから、撮影してるの」

 四天王が示す先には目玉と羽をくっつけただけのような浮遊物が。

「俺たちは見せ物じゃねぇ! ガルっガンっチュアァ!!」

 少年は遠距離タイプの魔法を唱えると、四天王ではなく浮遊物へと剣を向ける。途端にそれは粉々に砕け散る。

「ガルガンチュアね? そんなことをしてももう遅い! そこに記憶媒体はないのだから!」

 高笑い。悔しがる少年。

「こんなやつらに負けるなんて、不覚! ガルっガンっチュアァ!」

 それが最後の魔力だったのだろう。叫びと共に倒れる少年。その仲間たちがその名を呼ぶが、彼らもまた、次々に崩れ落ちていく。

「ガルガンチュア! 我! ガルガンチュアァ!」

 四天王の勝利の雄叫びに、人々は恐れおののいたという。


◆◆◆◆


 なんでかっこつけるとき自己紹介するんでしょうか?

 いや、キメポーズしてるときとかかっこいいんですよ? 我が名を将軍に伝えるといい、って感じで。ただ現実的に考えてみると、メタいというか、なんというか。


 それを事切れる前に指摘されたらどんな反応するのかなぁ、と思ってみましたが、まぁ興ざめ、シリアスブレイカーですね。ギャグならどうにでもなりそうな感はありますが。

 ガルッガンッチュアぁ!!

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