[短編(市場)・創作論]説明しよう!

 市場の水をまかなう泉のほとり、一人の紅竜がぽいと持っていたものを投げた。ポチャンとあっという間に沈んだそれは、非常に透明な水源でこそあるものの、あっという間に見えなくなった。

 ふと、座っていた彼女は脇を見る。先ほどから聞こえていたザザザッという音がそこで止まったためであった。

 草原に埋もれそうなくらいに比較的小さな体の獣が、じっと赤のことを見上げていた。

 だが特にこれといった声をかけられることもなかったので、再び魔結晶を取り出し、手のひらで転がし始めた。

 するとぴょんと上半身を持ち上げ、変形し始めた結晶をじっと見つめ始める。突然触れられたからか、視線を獣にやるが、結晶の成長は止まらない。

 まるで種から養分を吸い上げ、芽吹くように枝を伸ばして、伸ばして。葉っぱのない歪な植物は、やがてもとの姿を失った。

「おぉ、すっげ!」

 平たい鼻を結晶に近づける獣に、何よ、と枝をつきつける竜。

「遠目に見てたんだが、そのきらきらしてるのはなんだい? どうやってやってるんだい? 捨てるんならそれくれよ!」

 嫌そうな顔をしながら結晶の枝を手渡した竜は、これは魔結晶、と新たな塊を取り出した。


◆◆◆


 設定の説明するタイミングって、難しいですよね。

 早すぎても遅すぎてもだめですし、わざわざ台詞で説明するとグダグダになってしまいますし。短編だとどれだけそこに割くのか、長編だと良くも悪くもテンポが大事になってきます。


 また、キャラが説明する場合、彼らがどこまでそれを熟知しているのか、をコントロールする必要があります。

 常識なのか、専門知識なのか、どこまで学問が一般的に広まっているのか、特定の層しか知り得ないものなのか。

 特定の分野にしか興味のないマッドサイエンティストキャラだというのに他のことにもずいぶんと詳しいと、その称号はなんだよ、と鼻につく可能性も捨てきれません。

 タイミングに関しては、早すぎても遅すぎても。説明する事柄に触れたタイミングで行うことが適切なことが多いですが、わざわざ決戦のタイミングで、台詞の投げ合いと最中に入ると、今はそうじゃないだろう! となってしまう。


 説明タイミング。こればかりは読んで例を集めて、書いて慣れるしかないですよねぇ。読み返してこれはこっちに差し込む方が分かりやすいとか、テンポがいいとかもいい勉強でしょうけれど。

 皆さんはどうでしょうか? さぁ、説明しよう!

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