[短編(オリ)]我、欲するがままに
※暗い内容です
なぜここにはなにもないのだろう。
鬱陶しいほどに眩しい朝日に目覚めてみれば、冷たい空間だけが広がっていて。
用意しておいた朝食も、帰宅ついでに買っておいた甘いだけのパンで。画面左上に表示されている数字が、カウントダウンで。
多少遅れを取りながらもスタートを決めて、退屈な注文をひたすらにこなして、帰ってこれば、ひたすらに冷たい、家主である自分でさえ拒絶するような。
どうしてこうなったのかは分からない。大学を出て、就職して、ひたすらに働いても、昇進して、責任ばかりが課せられて、給与もろくになくて。
荷物を下ろして、スーツも脱がずに座り込む。天井を仰いで、あるのはこの空間を照らすための白熱灯。
いっそのこと……いっそのこと、こんな人生を捨てて、別の誰かになりたい。
手を引いてくれる子がいて、皮肉りあえるライバルがいて、仕事をこなせば一定の信頼は得られて。責任は自分の命を賭けるだけ。死ねばそれが、自分の責任となる、自由な世界。
できることなら、色んな子に好かれたい。それで、仕事仲間は、月一くらいで変わって、あと酒を飲んで夜を明かして……。
それが叶うならば、もうこんなところにはいないだろう。
苦痛。鈍痛。吐き気。
だが虚構であると認識していて、平気で動く体は、ふとこんなことを打ち込んだ。
異世界転生。
◆◆◆◆
こんな感じで人気ジャンルになったんですかねぇ。私は繰り返すようですが、異世界に現れた現界人というノイズが苦手です。特に、好き放題やってしまうタイプが。
いくらか前にこういうラノベは主に30代の方に好まれているという話を聞いたことがありますが、実際はどうなのでしょうか。逆に中高生は好まないとも。
私としては嬉しいですよ。私の中高生時代の読書といえば、ラノベという言葉が流行り始めた頃ですからね。今のこれが異質なものであると認識して避けてくださっていると思えて。
むしろ、物語に思いを馳せる、ということが、今の乱世でもできているのですから。
それで、こういった無双ものだとかって主人公にだけ自己投影して心地よくなれるってのが好まれるとか。いや、そのせいで内容が苦手なんだけど。
異世界という景色を望むのは勝手ですが、そこに土足で足を踏み入れて、絵の具をぬったくってタノシィーってなってるのが、ねぇ。
もちろん、異世界もの以外にも、内容が無双ものってのはよくあります。上記のような抵抗感はありませんが、もっと挫けて欲しいなー、という考えがちらついてしまいます。
もっと苦しんで。世界は個人に優しくなんてないんだから。
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