[短編(市場)]住居の探し方
そろそろ家を探さないといけない。
市場にやってきて、もう何十日が過ぎた。
ギルドに舞い込んでくる日雇いの仕事を舞うようにこなし、それが終われば言語研修の山のような課題。そして五日に一度、課題を提出して合格印をもらう。
壁に張り付けている進捗シートには、あと一つの空欄。ここに判が押されるとき、すなわち、最終試験の合格印が私のものとなるとき、ここから出ていかねばならない。
しかしどこへ行けばいいのだろう。毎日、宿で寝泊まりなんてできないだろうし、転々としようものならお金がいくらあっても足りないだろう。
そうとなれば、訊けばいい。市場の人たちは優しくてとても助かってる。私を担当してくれている受付の人に声をかけて相談してみる。
「言語研修後の住居、ですか。ギルドではいくつか支援や援助を行っていますけど……」
ごめんなさい。手を止めさせてしまって。
修了後は、望むならこのギルドの正式な所属となる。それを機に、個別に家や部屋を借りる者も多いが、大半はギルドと契約をしている宿に割安で泊まることを選ぶという。ほかには人を募集している共同住宅に入り、家賃を割り勘で支払う。はたまた、中期で人手を求めている依頼を受け、住み込みで働く者もいると。
なるほど。選択肢があるなら吟味しよう。礼を言えば、仕事ですから、となおを笑ってくれる。私の心の拠り所です受付様!
「ああ、失念していました。家を探してるからって、裏路地に引き込んで契約を進めるような人たちの提案に乗ってはいけませんよ。黒犬に気をつけて」
背中にかけられた言葉に、はいと私は答えたけど、思い返してみると、忠告してくれたんだな、て思う。
◆◆◆◆
農作するなら、家が必要ですよね。ではどうやったらそれを手に入れられるのか、考えてみたことがあるでしょうか?
家というのは、1つの作品であることに変わりはありません。そこにあるのが当然のように錯覚しますが、今、あなたが住んでいる場所も誰かが意図して建てたものです。
ではどうやって住みかを得ましょうか? そう思い先述のものを書き上げました。以前書いた、「指導者と生徒」の続編です。
もちろん、一家族一家屋、シェアハウスなんてものは文化感覚で違ってくるでしょうから、どんな形態になるかは考える余地がありますが、この話だけで一話くらい書けそうですよね。
王都に来た! 頑張るぞ! ギルドに泊まれないの!? じゃあ家から探そう。色んな契約形態があるのかー、選んだ先で事件発生! ってな具合に。
最近のファンタジーでは宿に直行しますが、このあたりにアレンジを加えてみると面白くなるかもしれません。
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