[短編(市場)]世界、それは閉鎖空間
白の境界。
それは、どうにも世界樹を囲むように存在するようである。
そこへと踏み込めば、たちまち肉体を形作る魔力が乖離を始めてしまう。触れただけでも、といいたい所だが、そこに壁のようなものがあるわけではない。草木や大地は続いているというのに、そこから先は誰もが知る禁足地。
どうしてこんなものがあるのだろうか。神々が白の世界で生きられない私たちのために世界樹を与えた、という一説も、納得はできる。
しかし、ならばなぜ草木は同様に生きているのだろうか。ある場所では跨いでいる木もあれば、境界を往復する雑草もある。
ならなぜ、私たちは出られないのだろうか。
白の境界とは? それは世界中で、遺産に次ぐ学問だがいまだ憶測の域を出ることはない。神様の贈り物説の他に、神の幻影説、魔法で作られた虚像説、あるいは、ここは牢獄説。いずれも結末は同じだ。
なぜ外が存在するのか?
ここに納得のいく答えは出てこない。いっそのこと、海に浮かぶ孤島なら夢があるというのに。
「おい、おっさん。そろそろ帰るぞ」
背後から声をかけられる。のしのしと歩いてくる傭兵は辛気くさそうな顔をしながら、背中の獲物を揺らす。
「ああ、何か成果はあったかい?」
いいや、とかぶりを一つ振る。
「こちらもだ。ところで、ひとつ、一般意見を聞きたいのだが」
彼は表情に乏しいが、腕は確からしい。真面目なのか、はたまた、過去に何かあったのか。
「境界の先に見えるのは、世界の続きかと思うかね?」
だがそれを詮索する必要なんてない。この身を守ってくれるだけでいいのだから。それが彼の仕事だ。
「続き……そんな説は初めて聞いたな。神様なんてものは信じてないが、そんな夢みたいなこと、あるはずないだろ」
なるほど、彼は現実主義らしい。そこから先へは踏み入れない。その事実を受け止めて、行ける場所へ行こうと言うのだ。
「そうか。よし、では帰るとしようか」
おう、と短い答えと共に背中を見せる彼に、ついていく。
◆◆◆◆
色々と設定を説明するときに、ある程度学問に至る場所まで解明されていることってままありますよね。ほんとにそこまで解明できてるんでしょうか? 前提の説をひっくりかえすのも大変なんですけどね。
それは置いておいて……。
世界って大きいように見えますが、各個人が意識している空間にしか存在しないんですよね。たとえば学校、職場、通り道、脇道、通らない道は全然覚えていないように。
見方を変えれば、認知できる知識や学問は触れたものしか得られないし、物語では描かれないとそこには存在しない。
できることなら、日々、世界を広げられるようにしていきたいですよね。それだけの時間を、お金を用意できるかはまた、別問題なのですが……。
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