[短編(市場)]いつしか描いた景色に
人通りもまばらな広場の真ん中。
だがそこにいる多種多様な眼差しは一点に注がれていた。目をひくくらいの装飾と、丁寧な手入れのされているらしい鎧に身を包んだ、一人の人間の青年である。頭部という急所をさらしながら、人差し指で示すは、足を止め、ゆっくりとふりかえる一人の竜。
「なんだ貴様は。俺を誰と知って、言ってるのか」
白で身を包む立脚類は、腰に指した剣を引き抜き笑む青年を認め、向かい合う。
「世界の支配をもくろむ魔王! 群衆の目は欺けども、オレをだますことなど、できんと知れ!」
高らかな宣言に、周囲の目が白いものにかわる。当事者二人を取り囲むように、あちこちで耳打ちが始まる。
「……相手は、してやる。ただし、答えろ。貴様はどこから来た?」
人相の悪い竜もまた、細剣を抜き放つ。
「っははは! そうだろうね! 勇者は世界のすみっこで誕生するものさ! 覚悟しろ大魔王!」
続く高笑いにため息をついた王は肺いっぱいに空気を吸ったかと思うと、避難しろ、と一声で市街を揺さぶった。
「民を騙すためにそんなことを……! 皆の衆! 悪名高き魔王を滅ぼす、オレの勇姿、しかと目に焼き付けよ!」
鎧に身を包みながらも身軽に駆け出した青年が、石畳の上に転がるのは間もなくのことである。
◆◆◆◆
市場の外伝でこんなものを考えていましてね?
中二病を患った勇者志望の青年とか少年が本編のメンツと戦う外伝。初めのターゲットは、人相の悪いグレイズ様。
もちろん、ただ勇者志望なだけで実力はてんでだめ。ギルドに所属して生活費を稼ぎながら強くなろうとするお話。
しかし、変に長くなりそうなので、書くなら魔王討伐の息抜きとかに。あ、でも天地も書きたい。
どうしてこんなネタが思い付いたのかといえば、ファンタジーだからですね。加えて本とかの文明の利器(?)が存在するため、中二病患者が一定数いるのは間違いないと思ったので。
で、魔王を倒すとごっこ遊びだろうと放置された結果、市場まで来てしまってグレイズ様を魔王と決めつけたところから始まるお話。もちろんグレイズ様は遠慮も手加減もしないので、主人公は敗北する。
そこから市場本編よりももっとマクロなお話でもできたらなぁ、と思っていたのですが、本編同様、脱線していくのは目に見えますね……。まぁ、折を見て書きましょうか。
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