[短編(オリ)]いつかどこかで

 おまえは、おれのことを知らないのだろう。

 どこで生まれて、なんと名付けられたのか。どう生きてきて、何回死にかけたのか。

 なぜならあなたはまだ、私のことを知らないから。

 誰を愛し、誰と結ばれるかを選び、死ぬまで共にいることを選んだとしても。

 貴様はどこからぼくを見てくるんだ。

 遥か天空から、じっと見下ろしてほくそ笑んでいるのか、この穴だらけの内側から目を借りるというのか。

 あんたはいつまであたしについてくるんだ。

 叫んだとして聞こえないふりをするのだろう。分かってるくせに、理解しているくせに、ただ好きに語るんだろう。


 この監獄に放り出して、何をしているんだオマエは。


◆◆◆◆


 何やら物騒な記述が見えたような……テーマは「作者の存在を知っている登場人物」です。

 私は、書くときは作中から「私の存在」を消すように心がけていますが、彼らが私のことを知ったら何というのでしょうか。

 ラクリさんには苛められたいな……。


 こう、ギャグなどのメタ表現ではありませんよ。

 作者を創造神として扱うのか、自身と同列の存在と見るのか。はたまた、意思を覗き見る悪魔として憎むのか。

 ふと気になった次第です。


 創作というのは、自身の内でこねた粘土細工を何らかの手段で現世に降臨させることです。自身が「そこに自分もいる」という認識をしない限り、登場人物たちは作者を認知することもなければ、閉鎖的な牢獄にいるとも気づかない。

 んー、哲学。登場人物たちは「作者」に対して何を思うのか。感謝、喜怒哀楽、恨み、殺意。想像つきませんね。

 生まれてこなければよかった、という生涯を送った人物は作者を恨むのでしょうか? 幸せな生活を送っていたら感謝されるのでしょうか? 助言一つで人生が一転した者がいたら、その一言を加えた作者に感涙の涙を流すのでしょうか?

 いずれにしても、登場人物たちが「自身と完全に乖離する」ことがあっても、分からないでしょうね。赤の他人の思考なんて、分かりませんから。


 さて、よく分からない哲学の話はこれくらいにして、一日の後半戦もがんばっていきましょー。

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