[短編(市場)]とある日、彼らは再会す
※市場ネタバレあり
うすら冷えるお昼時、玉座の陰で横になり、寝そべるのは、なごり雪を思わせる白斑の竜である。彼の主は遠出している上に、復興がほぼ終わりを迎えていることを踏まえると、彼にはやることがない。無論、戦闘などが起こるというならば跳ね起きて急行するが、そんなものに好んで身を投じるわけがない。
「…………」
ただ世界樹に遮られる日差し。暗い木の葉をぼんやりと見上げ、ゆっくりと呼吸する。
玉座に来訪者が現れようとも、誰も彼に用はない。持ち込みの郵送物は受付があるし、資料を読みたいならばレミーがいる。部屋を借りたいというならば、これもまたレミーが対応する。彼に仕事はない。
「あ、エプル……だったよね?」
ぼんやりと遠ざかる意識が、ふと引き上げられる。わずかに首の角度を変えて見やれば、そこには、先日まで滞在していた青竜がいた。だが帽子を被る個体で
、かつ彼の名を知る者は一人しかいない。
ヒュッ、と喉から音を出せば、青はのしのしと近づき、玉座の脇のスペースを見渡す。かなり広いそこはどこかへ続く道が繋がっているが、そこからやってくる人影はない。
「何してるの、こんなとこで」
ヒュウ。
「ごめん、やっぱり分かんないや」
世界樹の根っこの上で侵攻者が身を投げる直前に現れた者。戦闘の音を聞いて駆けつけて応戦した結果であるが、青の表情は、先日よりもいくらか明るい。
ヒュヒュウ、ヒュヒュッ。
やはり言葉にならない。青も、どうにか聞き取ろうとしているようだが、無駄である。
「えっと……こんなとこでなにしてるの? 昼寝?」
ヒュウ、と喉を鳴らした後、こくりと頷く。見ていただろうか、とエプルもまた、彼をじっと観察する。
「うーん、僕もぶらついてただけなんだけど、隣、いい?」
目を細めて頷くと、斑はまた寝そべった。ありがと、と青もまた、彼の隣に移動して伏せるのだった。
◆◆◆◆
エプルの設定、何にも触れてないんだよなぁ。
どうして彼は喋られないのか、といえば、正直そこまで作り込んでません。声帯が使えなくなることがあったのは間違いないですが。
彼の体躯のイメージはスレンダーでしなやかなものですが、もっぱら戦闘要員というギャップ。たまりませんね。
で、無口であるにも関わらずグレイズ様とは意志疎通ができます。さて、それは何故でしょうか? まぁそれはまた別の機会に。
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