[短編(七日)]とらべる……?

 夏。

 セミはいななき、温度計はぐんぐんと背を伸ばし、眩しい光は身体を焼き尽くす。窓から通りを見下ろしても、対策なしに歩く自殺志望者なんてどこにもいない。

 夏がくるたび、夏祭りが楽しみなものだけど、あいにく、今年は中止という回覧板が回ってきちまった。なんでも、疫病が流行っているから。

 妖怪も神も、そんなものは関係ない。ただ悠々自適に、熱光線を透かすだけだ。

 あー、焼鳥食べたいねぇ。タレが好みだけど、柑橘の香りのある塩なんてのもいいかも。パリッと焦がした皮もいいね。いっそのこと今からたかりにいこうか。

 だめだね。誰もいないんだった。

 こんな隔離社会を求める中でも、遠方からの仕事は少なからずある。旅行がてら出ていってしまった彼らは、日向とあたしだけを残すのも、ということで連れていってしまった。かくいうあたしは、行き先がヤマタノヘビのいた村ということで遠慮しておいた。

 なんていったっけ、あの犬神。あと、化けてる龍神。あいつらに出くわしたくなんてないしね。

 暇だ。神の眷属に入って以降、別に食べなくても平気だし、やろうと思えば外にも出れる。でもすっかり減ってしまった餓鬼を探すのも手間だし、幽霊で腹は膨れないし。

 んー、日向もいないから観察もできないし。そうか、帰ってくるまで、あのかわいい寝顔見れないんだね。それはそれで、損かもしれない。

 あ、そうだ。誰もいないなら、やつらの部屋でも除き見てやろうじゃないか。あの名前に悩んでいた男あって、この家あり。面白いもの見つかるんじゃないかぃ。

 サッシの上から飛び降りて、普段は入れない部屋へと向かう。


◆◆◆◆


 そういえば日向編では、基本的にコンパクト万芽なんですよねぇ。仕事のとき以外は彼菜のときもコンパクトサイズでしたけど。


 取り残された神は何を見つけるのか? ご想像にお任せしましょう。

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