[短編(市場)]いえぬそれは勲章たるか2
おっちゃん、と健気に声をかける少年がいた。誰がだ、と不愉快そうに返事をするのは宝石を商いする、元傭兵の土竜だった。
今はその店の裏手にある水浴び場に腰掛け、脚を水に入れていた彼は、すっかり人通りの少なくなったこの場で静かに、休憩をとっていた。
突如現れたのは、おそらく貧困区の少年。もの乞いをしたり、飲食店のゴミを漁るにはいい時間だ。物影から足音もなく現れた彼はじぃと、店主の服から覗く逞しい背中を見つめていたのだ。
「この肩、どうなってんだよ。痛くないのか?」
もともとは素通りするつもりだったのだろう少年は、急ぐでもなく尋ねてくる。邪険に扱うこともなく、青年は軽く振り返り、問いに。
「痛むぞ、これは……ガキ、おまえ、いくつだ」
そんなこと分かんねぇよ、と即答する少年の睨みに、彼は動じない。毎日を凌ぐのに、歳という概念は不要だとする者は少なくはない。
「なら、戦争は知ってるか?」
なんだそれ、と口を尖らせた。それもそのはず、長い間、戦争も紛争も、行われたという噂は流れてきていない。
「例えるなら、騎士と騎士が、国規模で殺し合う喧嘩だ。おまえがある日突然、歩いてくる敵の騎士を一人でも多く殺せって言われたら、どうする?」
そんな温いものではない。少年はわかんねぇ、と目を丸くする。
「そうだ。それでいい。ガキは知らなくていい。戦争なんてな……さっさと行かないと、食いっぱぐれるぞ」
はっとして走り出すその背中を見送り、竜は無言で足を揺らした。波紋が水浴び場に広がり、反響し、返る。
古傷に触れながら、彼は日が暮れるまでそこにいた。
叫び声と共に世界が遠退いた。
右胸の真ん中を貫くのは、赤く汚れた刃。
彼の姿がぼやけ、塗りつぶされていく。
白い世界に飲み込まれながら、刃が持ち上がる。
それは容易く肉を、骨を断つ。
彼女の声も遠ざかる。
◆◆◆◆
致命傷を負ったにも関わらず、どうして生き残れたのか。その疑問は彼の中でくすぶり続けます。
あー、ギルシェーシャの二人でシミュレーションゲーム作りたいな~。シチュエーションばっかり思い浮かんでばかりでだめです。進捗だめです!!
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