[短編(市場)]こすちゅーむいめーじ7
休みの店にも関わらず、裏口に現れた突然の来客に応じたギルは、彼を招き入れ、特にもてなすでもなく自身の作業に戻った。
いつもの石を磨く作業机ではなく、使い捨てのシートの敷かれた床の上で胡座をかき、身の丈近くはあるだろう鈍器を持ち上げる。
「何それ。そんなの持ってたんだ」
ほぼ対面する形で、伏せている青竜が目を丸くしている。
「もう、使えねぇけどな」
小さな、短い回答。
そこには分厚い鉄板に柄が生えているような、人目では剣には見えない武器がある。左手で少しだけ持ち上げ、刀身を左膝に乗せる。
ここのもう一人の住民、シェーシャは休みだからと寝床で惰眠をむさぼっている。そちらをちらりと見やる主は脇に置いていた柔らかそうな布で刀身を磨き始める。
「じゃあ、何か思い出とかあるやつなのかい」
青の尻尾が揺れる。
「傭兵時代の、相棒だ。短剣とかも扱えるが、力任せにぶったぎれる方が楽だったしな」
磨かれた刃は鏡ほどではないが、暗い室内を映し出す。
「相棒だから、捨てられない? それとも、また傭兵に戻るの?」
無神経ないびき。
「そう言われると、相棒じゃ、ないな。これが4代目で、最後に使ってた一本だ。戻るつもりは、ない」
宝石を扱うよりも雑な手つき。
「もう、敵か味方か分からない命のやり取りはごめんだ。やってられん」
布を濡らして、また磨く。にじみ出る液体は刀身に水玉模様を作り出す。
「もしよかったら、安くて量の取れる宝石っぽいもののこと、教えてくれないかな?」
安くはないぞ、と相棒を眺めるつつ手は止めない彼に、客は負けないからね、とにやりとする。
◆◆◆◆
久しぶりのこすいめ。七本目になります。
どこかでギルは傭兵時代、大剣を振り回していたという設定に触れましたが、では当時の相棒は今どうなっているのか、といえば、彼らの住居、もとい倉庫に保管されていることでしょう。
どうしてこの武器を選んだとかと言えば、彼の師匠二人のどちらも教えなかった武器だから、でしたかねぇ。斧とか短剣とかの扱い方を知っているならばそれを理解した上で一撃で屠るのが、損害少なく戦える可能性が高くなりますから。あと、若気の至りな部分も垣間見えていいかなー、と。
今となっては丸くなってしまった彼ですが、商売についてはまだ角はとれていない様子。もっと商売の知識を頭に入れておきたいですねぇ。
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