[短編(市場)]MyFavorate

※流血あり


 今日はどこで狩りをしよう。世界樹を眺めるばかりでは膨らまないお腹を抱えて、切り立つ岩場を蹴る。

 ともかく飛んでみたけれど、まずは獲物を探す方が大事だよね。空を切りながら山を下り、眼下に広がる大地を見渡してみる。でも遠くで飛んでいる仲間に怯えてしまったのか、すでに避難を終えたあとらしく、ネズミの影ひとつも見つからなかった。

 お腹すいた。でも見つからない。

 結局、仲間がいなくなってもありつけることはなかった。しょうがないや。急旋回して山の方を確認して、高度を上げようとする。

 あ、トレムだ。

 ふと視界に入った仲間の姿に、名前を思い出す。ぶらぶらさせている獲物は大きい。

 ……ちょっとだけもらえないかな。

 それは名案だと納得させて、彼のあとをついていく。群れのある山ではなく、裾の遺跡に着地した彼は獲物を咥えて歩き出した。ちょうど追い付いて、声をかけ交渉してみると、いいよ、との早い返事。思わず一歩進む。

「でも、ちょっと待ってよ。毛皮が欲しいんだ」

 あまり傷の目立たないが、事切れているクチナシをぶらつかせながら、トレムは歩き出すので、ついていく。

 しばらく歩くと、山の方からは見えないだろう場所までたどり着いた。かと思えばクチナシを寝かせた彼は独り占めするようにしてそれを翼でおおってしまう。

 思わず尻尾で茂みを叩いてしまうが、

「全部は食べないから! もう少し待っててよ」

 と無視して食事を始めてしまう。

 はぁ。食べ残しをくれるのかなぁ。それも仕方ないかぁ。

 私がのんびりとし過ぎたからこうなったのだ。お腹がすくのも仕方ない。こんなところでワガママを言っても、もとは全部、トレムのものになるはずだったんだ。

 やがて彼が血まみれの面を上げて、くるりと振り返る。汚れた毛皮を咥えながら、おまたせ、と腰を浮かせる。

 そこに残っていたのは、先ほどよりも二回りは小さくなったクチナシ、だったもの。まだ食べられる部位があるというのに、そのままだった。

 トレムを見てみれば、食べなよ、と目を丸くしている。いいのかと訊いたら、全部あげるよ、と悩むそぶりもない。

「ぼくが欲しかったのは、こっちだから。うまく剥げたし、お宝だよ、お宝」

 笑みを浮かべる変な趣味の彼に礼を言いつつ、ぼうっと宙を見つめているクチナシの目を眺め、顎を降ろした。


◆◆◆◆


 物語を舞台とする彼らの趣味はなんでしょうか。


 トレムは毛皮が大好きな青年です。その魅力にとりつかれたのはどうしてなのか、書いてみても楽しそうですね。

 七日だとボードゲームをしてるシーン、市場だと本を読んだり遺産いじりとかがありますが、他にも特有の趣味を用意してみてもいいかもしれませんね。

 ふと日常に戻る彼らにライトを当ててみませんか?

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