　猫が存在を示している。ソファの肘掛けにちょこんと座りながら、じっとまわりにいる人間の姿を監視している。

　うみゃー

　彼が狙いを定めたのは、ソファに座る人間だ。一度だけ相手の顔を覗き込んでから、目があったならもう一度、うみゃー。合わなければ、ターゲットの視界をわざとらしく横断する。

　互いの目を見つめる。それは彼にとって、ある種の合図であるらしい。

　そして互いの存在を認めたならば、彼はそろそろと膝の上を陣取る。人間と同じ方向を見て、尻尾をくねくね。ときには、座られた者の首をさらさらと撫でることもある。それは、いまかいまかと至福の一時を待っている彼の高揚を示している。

「しゃーないなぁ」

　その一言を理解しているかどうかは分からないが、猫は撫でられることに興じ始める。顎、背中、側面、尻尾、額と、いずれもごろごろと鼻をならす。しかし腹だけは嫌らしい。すぐに隠して態度で訴えてくる。

　そこじゃにゃーよ

　そして愛でてくれる人間の意識がこちらに向かなくなった頃、かつ満足したとき彼はようやく移動する。

　いそいそもぞもぞ。炬燵パラダイス行き放題権を行使して彼は姿を消す。

　次に人間にすりより始めるのは、彼の食事時である。

◆◆◆◆

　ずっと寝てるんですよね、猫。今も炬燵を占領して寝転がってます。

　猫は気まぐれとは言いますが、相手の状態もちゃんと見ている気がするんですよね。自己アピールはするものの、応えてくれなければ待つ。ただし諦めは悪い。

　自己都合を優先しつつも主張はしっかりするし、要望に答えてくれそうならちゃんと返事もする。彼特有なのでしょうか？

　私がいる間は基本的に寝てるし…前回もこうだったかは思い出せないし…まぁ、平和が一番でしょう。ぶふぅぶふぅとイビキも聞こえていることですし、私もまた仕事の準備を始めましょう。

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