[短編(オリ)・創作論]コトダマとソレと

 ファイア。ウォータ。スライス。ロック。

 いずれも多くの魔法使いが、最低でも一つは扱える魔法である。それぞれ、火を起こし、水を生み出し、風を起こし、石を隆起させる。初歩中の初歩の魔法だが、どうしてこのような名前が付いたのだろうか。

 魔法の起源は古いが、正確な記録は残されていない。残されたとしても、実在したか怪しい伝記ばかりが見つかっている。もっとも、その魔法使いの残した爪痕というのも発見されていることを考えると、虚構ではないものも紛れているらしい。

 つまり、なぜ魔法によって起こる現象にこういった名前がつけられたか、という記述が存在しないのだ。

 名前が各魔法を導いているのか、魔法があって名前がつけられたのか。手がかりになるだろうかと考え、実験もしてみているが、どうにも分からない。

 そもそも、魔法は思い描き、名前を口にすることで発動するものだ。思い描くだけでは形にならないし、単に名前を言うだけでは音になるだけ。両方があってこその魔法なのだ。

 魔法の習得に関係する本が少ないのも、これが一因だろう。読んで、頭に浮かべて、ぽつりと呟く。するとあろうことか、魔法が発動してしまうのだ。

 何かいい検証方法はないものか。今日はこれくらいにしておこう。また別の視点は、明日に思い浮かぶさ。


◆◆◆◆


 そこに、それがあるから、名前を決めた。こういうことってあるあるだから、名前をつければ便利じゃない? この感じにも名前を与えよう。


 名前って、ソレが存在して初めてつけられるものなんですよね。

 なら魔法という文明は、不思議な現象があって、魔法という名前がつけられた。そして、内容を分類していき、ファイアなどをつけた?

 よくよく考えると、魔法ってこういった命名するための規則から外れるんですよね。

 マッチによって起こされる火を「火」、魔法の火を「ファイア」と定義して、「焚き火」を起こすことを考えましょう。

 まず、組んだ薪に「火」をつけて、大きくして「焚き火」を起こします。まぁ、そうですよね。

 しかし、組んだ薪に「ファイア」で火を用意して「焚き火」を起こします。卵か鶏、どちらが先かという話になるのですが…。

 現象という観点では双方とも、火、という現象を用いています。魔法で起こされた火に「ファイア」という名前を与えるならば、前提として魔法という概念に「魔法」の名を与えないといけない。

 しかし、木を見て森を見ず。魔法の一端である「ファイア」をすごいものとして見ることはできても、これを「魔法」であるとは認識できず、名前を与えることができないはず、と。

 まぁ、研究が進んだ結果、魔法という分類が造り出された、というならば利に叶います。しかし正直、そこまで考えても物語は進みませんし、風呂敷を広げるためのネタ程度にしかならないです。


 魔法の起源は、天上人や神様説だと、異文化の流入によってあれこれあれこれと考えるのが手っ取り早いですが、あなたならどう作り込みますか?

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