[短編(妖魔)]年忘れの宴

 遥か遠方、今は昔の面影もない場所に、夜遅いというに点々と灯る明かりがある。

 変わり映えしない景色をじっと動かずに眺めるのは、真っ白な体と、真っ赤な目を持つ、大きな大きな蛇である。

 雪は降らないまでも、身を切るような寒さの中、自身の背中に顎を置いて、一人でじっと遠くを眺めている。

「父は酒を飲んだくれて死んだとか」

 錆び付いた記憶を掘り起こし、先割れの舌と共に口に出した。

「酒とはうまいものなのか」

 特に誰にかたるでもない。

「そもそも、人間の作った酒が我らに効くのか?」

 妖怪の疑問。

「しかし涛のやつ、今年一年は姿も見せず、何をしておるのやら」

 ぱちくりと、まばたき。

 ふと視界が暗くなった。同時に、眼下に広がる木々の揺れる音。間もなく、彼の背後に白蛇と同じ背丈はあろう白狼と、猛禽が姿を現した。

「どうした、二人とも。涛のことでも知らせに来たか」

 振り返ってみると、何やら袋の手提げ部分をくわえている鼻先と、嘴が目にはいる。なんだそれは、と尋ねる前に二人はそれを開封した。

「いやね、お土産持ってけってさ、言われたのよ。別に要らないっていったんだけど、聞かなくてね」

 そこには瓶が数本。

「懐かしいやつに会ってな。見繕ってくれたから、お前と食べようかと」

 そこには人間用の食べ物がずらり。

「餓鬼よりかはまずそうだな、それは」

 白蛇は興味ありげに、首をもたげた。


◆◆◆◆


 忘年会。妖怪が真似してやっててもいいじゃないですか。


 さて、今回は妖魔のお話でした。参にて出てくる者たちからお酒を受け取ったリムと、万芽から食料を押し付けられた遮詠の二人。一人で味わってもよかったが、白蛇のものへと持ってきました。

 忘年会って不思議ですよね。連続した時間を、宴という形を持って区切ろうという文化なんですから。翌日にまだやることが残っているのに(環境による)。

 それで、私も参加しました。美味しいものを食べれるっていいですね。数日間、食べるものを管理しないといけませんけれど、たまにはこういうのもいいでしょう。


 あと10日で本格的な年末ですね。

 何か面白い連続ものを考えたいものですが…

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