[短編(オリ)]最悪の災厄、救いたる神の手
嫌でも目に入る、不気味に輝く、二つ目の太陽のような塊。
あれが、ここから見て東の方角に現れて久しい。どうやら隕石と同じ原理で輝いており、ゆっくりと地上へと近づいているらしい。さらに不思議なことに、その速度は人間が走るくらいの早さだというのだ。
隕石って、空気との摩擦で、地上へと着地する前に物体自体が燃え尽きてしまうことが知られている。それが流れ星だ。ではあれはなんだろうか。
一つ目、隕石説。燃えているものの、小さくなる気配はない。だから無機物だと仮定するなら、いくら加熱されても溶けない蒸発しない物質だということだろう。
二つ目、生命体説。燃え尽きたそばから再生しており、見た目に変化がないように見えている。専門家はこれをそうとは断定していないが、未知の生命体ならばありえない話ではないだろう。
三つ目、非物質説。誰の目にも見える心霊的なもの。今のところ誰も信じていないが、あり得ないこともない気がしてる。もしかしたら日々の悪態が蓄積して降ってきているのではないか。
また、宗教による救世主説、災厄説なんてものもある。どちらも、私たちを滅ぼすのが目的なんだとか。
どれにしても、あれはそこにあって、どうすることもできない。既に落下予測地点周辺の住民は避難し、破壊作戦も実施済み。
待つしかできないなら、日常に溶け込んでしまったそれをただ眺めるしかできないのである。
◆◆◆◆
悪を名乗る魔王がいるならば、なにも語らぬ災厄が現れることもある。
自らの理想郷のために奔走し魔王宣言する者がいるならば、得たいの知れないものがいてもいいですよね。災厄と名付けておきましょう。
この場合、登場人物は皆、好き勝手に想像します。救世主だの破壊神だのと。災厄当人から宣言が行われないため、超越的存在に対して常識の言葉を割り当て、それが理解できるものだと錯覚する。
錯覚することで、それが何であるかという追求を放棄する。諦めないならば、何であるかを調査することでしょう。
絶望に近い何かを感じますね。
で、災厄そのものが自らに害をなさないものなら、いずれ名前は忘れ去られ、景色と同等なものに成り下がります。災厄と認識したにも関わらず忘れ去る。
逆に害をなすならば過去の記録にすがったりだとかもできるわけですし、登場人物の行動ネタには困らないことでしょう。
語ることのできない災厄と、どう付き合い、生きていくのか。災厄は何も見ていないし、ただそこに在るだけ。
勇者なんてものは、相手が魔王だから立ち向かえる。敵だと認識できるから戦える。
勇者よ、災厄に立ち向かう覚悟はあるのか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます