[短編(オリ)]私の描く無双もの1(中編)

 一通りの講座を受けた俺たちは、オーブのもとへと案内された。

 重厚な扉を抜けた先には野球場のような席がずらりと並んでいる擂り鉢状の空間がある。その真ん中で、光と熱を放ちながらぷかぷかと浮かんでいる物体がある。まるで小さな太陽だが、発光しているだけの球体のようにも見える。熱は感じない。

「では早速、本日分の契約がありますので、始めていきましょう」

 俺たちだけでか? どんな指示にも従わざるを得ないのは事実だが、あれが爆発でもしたらどうしてくれるのだろうか。

「おれは遠慮する。帰れる目処が立たない限り、巻き込まれたくないからな」

 ビルダー、もといアクスと名乗っていた彼は、俺たちと距離をとる。お堅い奴だな。教師、もといメーペはご自由に、と微笑む。戦争とか言ってたわりには大人しいな、こいつら。

 そんなことを考えていると、扉の開く音が聞こえた。俺たちとは反対側から、メーペと同じような服を着た人が三人、入ってきたようだ。

「ちょうど、魔獣派も来たようですね。では、まずはルトマさん、あちらに立っていただけますか?」

 教師はオーブの真下にある丸い舞台を指しながら、もう一人の同胞、もといルトマに言う。彼女は分かりました、と歩き始めた。

 疑問に思わねぇのかよ。向こうのやつらも整列して眺めてるし、魔法とやらで攻撃されたらどうすんだ。

 舞台を目の前にして、深呼吸。それから、上がった。

「真ん中に立ってくださいねー。それからリラックスしてー」

 なんであんなに広いんだろう。一人ずつ契約とやらをするっぽいけど。

 ルトマが真ん中に立ち、正面には魔獣派が並んでいる。だが彼らに動く気配はない。

 そんなことを考えていると、視界が真っ白になる。とっさに目元を両手で覆うが、変化はない。この光は手を突き抜けるとでもいうのか?

 いや、違った。防ぐ方向が違うのだ。オーブ、もとい光源は真上にあるのだから、正面を防いでも仕方ない。

 気がつくと、景色は戻っていた。野球場の真ん中に誰一人として欠けずに立っていて、ルトマが舞台から降りてくるところだった。

「先にこちらから済ませていいか? 召喚者はいつも眩しくていけない」

 その背中に、魔獣派の一人が言った。メーペはどうぞ、と微笑みかけると、彼らは代わる代わる、舞台に立つ。しかし、先ほどとは異なり、オーブは少しだけ光る程度であった。

 そして何も言わず、彼らは帰った。まだ俺が残ってるのに。

「では、クルスさん、あなたで最後です。行ってらっしゃい」

 嫌だなー。ぴかってなるんだろ? しかもあそこが一番近いみたいだ。目を瞑っておこう。

 舞台に乗って、中央へ。なんとなく背筋を伸ばして深呼吸。眩しくならないでくれ。チカチカするんだよ。

 もちろん、無機物らしいそれはそんなことを気にすることなく世界を白で塗りつぶした。あぁ、焼かれてる気がする。熱もないみたいだけど。

 そうこうしているうちに、光が収まった。終わったか、と目を開けて舞台を降りる。だがメーペが目を見開きながらこちらを見つめていた。

「クルスさん、いえ、ルトマさんも、これで契約は完了しました。このときに得られた魔力の量を数値化して、派閥ごとに集計したものが契約値となります」

 はっとして早口で説明している。なんだったんだ。

「また、魔力は瓶入りの水のようなもので、消費したら、オーブから得るしか回復しません」

 不便だな、そりゃ。

「そして、契約で得られた魔力を使って、人々の生活を豊かにする。それが、私たちのオーブを中心とした生活になります」

 魔法でどうこうするわけではないのか?

「それでは、あなたたちのお部屋に案内します。どうぞこちらへ。」

 なんかよくわからねぇな。魔力ってこう、力が湧いてくるもんじゃないのかね。


◆◆◆◆


さぁ、無双の幕開けだ。


何で圧倒するのか、考えておくと作りやすいんでしょうね。なんでもありなのは遠慮したいですが。

そして、思ったより長くなりそうなのでパート3まで続きます。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る