[短編(市場)]親という、子という誰か

ある日、卵係の当番だった私は、前任だった者から孵る気配はない、と伝言を受けて、面倒ごとにはならないだろうと本を持ち込んで、見張りに望んだ。

森のなかでも深い場所。村の人々が案内なしに踏み込めば決して帰れないだろうくらいに深い場所に、紅竜たちの卵は集められる。数ヶ所に点在しているらしいことは知っているが、私はこの場所しか知らない。

育て親いわく、自分もここしか知らないと、新たに孵った紅竜の子を背中にのせながら教えてくれた。

男は狩りをして、飢えを癒す。

女は一族の宝を守り、育て上げる。

そう、親から教えられる一方で。

お菓子の魔女は、今日も気分屋。

文字の世界は自由で。

招待された宴の席で、お酒をあまーいジュースに変える。

魔法は自由に踊り出す。

けらけらと笑いながらぺろりと飲み干した。

できることなら、当番なんてものにも出たくはない。けど親に怒られるのは目に見えている。だからせめて、本の世界に引きこもりたくて。

私以外には、誰もいない。あるのは誰かから産み落とされた卵が十個ほど。視界にいれないように、目を背けて。

魔女は今日も気まぐれに。

空を飛んでは魔法を使う。

雨降り、光降らせ、虹をかけ。

たまたま立ち寄った町の人たちを喜ばせます。

ふと聞こえた産声に、かけ降りた魔女は優しく


どこからか、なにかが聞こえた。

破れる音と、ミィ、という、およそ森では聞こえない音。


◆◆◆


さて、誰のお話でしょうか。


彼女たちの一族にとって、親子とは何なのでしょうか。少なくとも、特別な他人以上に他人なことでしょう。

正直、この設定はかなり場当たり的な思い付きで書きました。それぞれを掘り下げるための過去の話をしたいと思って書いていると、不思議と、もともとそうであったように思えるんですよね。


明日はこれの続きにしましょうかねぇ。

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