[短編(市場)]美味しいものを食べたい

そんなこと言われても、と尻すぼみ気味に口にしたのは青竜だ。

「あのさぁ、家には備蓄も何もないのに、突然、美味しいもの食べたい、とか言われても何もできないって。何を食べたいのさ」

問いかける先は、彼の寝床に頭をつっこんでいる紅竜。いつもの衣を脱いで、ごろりと寝転がっている。

「なんでもいい。美味しいもの食べたい」

不貞腐れているわけではない。今朝からぼんやりとしている彼女を案じて小屋に留まることを選んだ彼だった。

だがそんな思いを知ってか知らずか、昼も少し過ぎた頃に、突然彼女は口にした。

美味しいもの食べたい。

「僕の美味しい基準に合わせると、肉しか出ないよ? それでもいいの?」

それはイヤ、と間髪入れずの回答。

「じゃあ何を食べたいの。お菓子? デザート? スープ? それともステーキ?」

思いつく限りのものを挙げても、違う、と寝返りをうつ紅竜。伸ばされた尻尾に遺産がぶつかり、移動する。

「よくわかんないんだけど、食べたことないもの、食べたい。それでいて美味しいの」

抽象的ながらも目標が提示され、数秒悩んだ彼は、今晩出かけようかと提案。こちらもまた、数秒してから可決される。


◆◆◆◆


美味しいものを口にすること。それは至福の一時。それは動物である以上、訪れる物語。

(植物に味覚的なものはあるのか…?)


さて、ラクリさんが美味しいものを食べたかったみたいです。異世界の食文化とか考えるのもいいですが、そこには必ず食料事情が現れてくるもの。

市場では少なくとも、畜産も農産も、ほどよく供給されていると想定しています。そして者の出入りも激しいことを考えると、万人受けする料理か、専門系の料理が発達しそうですね。

ではそれがほんとに美味しいのか。それこそ産まれと育ちが関係するものですが、どうなるのでしょう。

リエードの提案するような生肉でも高級品のものは、美味しいと感じるのか。貧乏舌であることも否定できませんし…。

一度は、各分野(?)の高級料理を口にしてみてもいいかもしれませんね。経験知、大事。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る