[設定・創作論]いずこより来るものか

市場の水の源流である泉には、今日も者どもが集まっていた。

この水はどこからくるのか。あるとき、この近くを地中深く掘り進めた者もいた。しかし水が出るどころか、白の境界らしい部分が発見され、大騒ぎになった。

その発見者は足をそこにつっこんでしまい、危うく命を失いかけたとか。以来、この泉そのものに水の発生源があるのではと調査が盛んであるものの、生活に関わるものである以上、下手なことができないのが現状だ。


泉の近くにある飲食店に、二人の竜がやってきていた。一方は女の青竜、もう一方は体の小さな山飛竜だ。

「そういえばさ」

だが青竜から発せられるのは青年の声。

「この肉ってどこから来てるんだろう」

二人の間にはテーブルと、三枚の平たい食器。うち二枚には、同じ種類だと思われる肉の塊があり、残りには甘そうな焼き菓子が山を作っている。

山飛竜は肉を少し噛みちぎり、呑み込んでから、はてと首を傾げる。

「確かにね。故郷では狩りが当たり前だったけど、ハンターが趣味な奴だけで全部どうにかしてるなんて聞いたことないし」

青竜は大きな一口でかじりつく。

「そもそも、ここらではあいつらを見ないよね。どこから集めてるんだろ」

口いっぱいの肉を咀嚼している彼は、どこか急いでいるように見えた。飛竜も再び一口。

「それに、野菜とかも、人口のわりにはまかなえてるっていうのがすごいよね。市場の中で、同じ人に手紙を届けることなんて滅多にないってベニリアが言うくらいだし」

咀嚼しながら言葉を紡ぐ飛竜の前で、ごくんと呑み込んだ青は確かに、相槌。

「商人に聞いてみるのが早そうだね。帰り際に聞いてみようか」

それがいいね、と飛竜の口から長い舌が伸びて、器用に焼き菓子を一枚だけを捉える。


三枚の平皿が空になり、店員を呼んだのは飛竜の方だった。唇をなんども舐めながら、首に下げてある袋を店員に差し出し、硬貨を弄らせている。

その間、青竜は件の問いを投げかけた。すると店員は、

「クチナシたちを繁殖している施設から、直接仕入れています。見たところ、お客様は配達員でいらっしゃいますね? 本日は発注の日なので、もしかしたらあなたが発注書の担当になるかもしれません」

と、すらすらと答えたのだった。


◆◆◆◆


市場語録

クチナシ…意思疎通を一切図れない者たちの総称。獣などと似た姿をしているが、感情表現に乏しい傾向がある。


昨日のお話の続きです。

食料はどこから来るの?という問を持った、いつもは見ない組み合わせの二人に、店員さんが教えてくれました。

もちろん、施設は畜産業とかのことです。

市場では、人間獣竜ドラゴンと、全員が生活しています。しかし、こういったサラダボウルな場所だと、何食うの?どうやって意思疎通してるの?という疑問が現れます。

どんな食料も生産するには限界があることを考えると、幅を広げることで解決するしかなくなります。

では、彼らは何を口にするのか?となると意思疎通できない者たち、ということになるでしょう。

コミュニケーションできるほど、気まずいことはないですから。


他に考えられるものとしては、人工肉とかそんなあたり、近未来系でないと設定が難しい気がしますね。

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