[短編(市場)]こすちゅーむいめーじ4

 ある日のまだ早い時間、樹海にビヨンビヨンと糸が弾む音が響いていた。パチパチと小屋の前で爆ぜる焚き火の近くにて、紅竜は弓を手に弦を爪弾いていた。

 強くしなる木材でてきていた、今は朽ちかけの弓。

 やがて飽きたのか、弓をそばに置いて、火もとに刺していた棒を一本、手に取る。火中から引っ張り出されたのは、皮が軽く焦げた果物だ。

 その一つの朝食を眺めて、再び手を伸ばす。取り出されたのは全部で四つの焦げた果物の串焼き。彼女はもくもくと一つを口にした。

 焦げていたのは表面だけだったらしく、パクパクとそれを腹に納めた頃、小屋から虚ろな目をした青竜がにゅっと首を出す。

「まーた夜ふかししてたの? 今日は遺産の納品、するんじゃなかったの?」

 また今度にする、と這い出すこともせず揺れている青年は額に寝藁をつけている。眠いならば寝ていればいいのに、と次の焼き果実をかじる彼女の尻尾がずりずりと土の小山をつくる。

 次に青年が口を開いたのは、朝食を終えた紅竜が棒を薪として放り込み、弓を手にしたときだった。

「あれ、ラクリって弓なんて持ってたっけ」

 座ったまま、ない矢を構える仕草をする彼女は、どこか間抜けだ。

「こっちに来るまで、使ってたのよ」

 爪で摘んでいた弦を放すと、ブンと短く音を鳴らす。

「生まれたところでは、よく使ってたからね。狩りに、護身に……生活の必需品だったわ」

 今は必要なくなったけどね、と付け加えた彼女は、再び弦を引く。ミシミシと音を立てて、弓がしなる。

「道具かぁ。僕たちはいつも、村とか町でものを交換するか、狩りをしたり、だっかなぁ。使うのは、いつも爪か尻尾さ」

 胸を張るような仕草とともに、ガシャン、と屋内から物騒な音が聞こえた。いくらか遅れて向けられた、細められた紅竜の視線に、ごめん、と青竜はひっこんだ。

 今日は一雨ありそうな重い雲が世界樹の上に鎮座している。樹海から立ち上る細い煙が絶えず、吸い込まれていく。


◆◆◆◆


武器。

それはファンタジー世界において、文明を示す貴重な物であり、キャラクタを特徴づける第一歩でしょう。

特に、文章で容姿などを示すときに、容姿に何もなければ目を引くのは持っているものかと思われます。

市場の場合、ラクリは弓と魔法、ギル、グレイズ、は剣、騎士は剣槍など…はい、某SRPGのゲームによっては三すくみしたりする武器です。フェリは防御の低い、すくみを利用するタイプです。

一応、遺産という形で銃のようなものがある、と想定していますが、まだ流通はしていないでしょう。

また、専用武器のようなものを考えてしまうことが、誰しもあると思います。しかしキャラクタの外見イメージを損ねてしまう場合もあることを踏まえると、歴代の知恵である武器の造形を活かしたほうが…となるパターンも少なからずある気もしますね。


剣の軌跡と共に尻尾でバランスをとってる姿って、美しいと思うんですよね…

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