[短編・日記]第70話 届かぬ声
少年の確かな一撃が敵将の動きを止めた。気持ち悪いぐらいに静かな敵将は軍を指揮しているにも関わらず、身振り手振りのみで全てを操っているかのようだった。
だが百万といた敵も、敵将の後ろで援護するだけの弓兵や魔法兵のみだ。しかも、少年の仲間が注意を引いているため、敵将を守る障壁はどこにもない。
今こそ、とどめを。愛する者の仇を。
少年が剣を振り上げると、受け止めようとする敵将の剣。だがそれらはぶつかる前に小ぶり剣はくるりと軌跡を歪ませた。
取りこぼしたかのように少年の剣は地面に落ち、その身軽な体躯が宙に浮かんだ。その場で一回転した少年は敵将の顎めがけて足をぶつける。鈍い感触を感じながらにやりと笑った少年はすぐさま地に足をつけ、捨てた剣を拾い上げ距離を取る。
「まるで芸だな。うっとうしい」
敵将の兜が取れていた。ガチャンと地面に落とされた兜を拾い上げることもせず、彼は一人の勇者を見下ろした。
顔を強張らせながら、じっとこちらを見つめいる少年の顔を。
少年の背中側にいる陣営から、敵将の名前が叫ばれた。
「嘘だ……なんであんたがいるんだよ!」
ギル・ヴルム
数日前まで、少年を含む軍を率いていた将であり、先日の戦いからの逃走時に囮となったはずの、少年の育て親の一人。
「黙れ。ここは戦場だ」
夜の海のように暗い瞳が向けられ、上等な剣が閃いた。
◆◆◆◆
闇落ち!それはなんか分からんがテンション上がったりするエッセンス!!!
ギルがまだ英雄と呼ばれるきっかけとなる物語をゲームとして出したい感があるのです。シミュレーションRPGで。仮に洗脳なり乗っ取りなりされた場合、最強の壁となりうるのではないかと!!
ちなみに劇中の少年というのは、この物語の主人公であり、ギルとシェーシャに育てられた(実子ではない)立脚類の竜君の予定。
さて、かつての同胞が闇落ちや敵対、という展開が行われるとき、本当にそれは必要な過程かどうか、吟味する必要があるのでは、と書いてて思いました。
お互いに手の内を知っているからできることだったり、癖を克服していたりとか成長を見せつけることのできる場面ではありますが、文字の上では、読者も筆者も疲れてしまう部分になりえないでしょうか。
どうにかその展開に持ち込むとしたら、計略家が罠にはめるだけ、くらいがちょうどいい気もしますが…腕の見せ所、なんですかね。
とうとう70まできましたね。まだまだ終わるつもりはないですが、一年続ければすごいことなんでしょうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます