[短編(市場)・創作論]金銀財宝
コツンと心地いい音が鳴った。
青色の竜が、食卓に雑に置いた食材に紛れ、硬貨が一枚、落ちたのだ。
今日は彼が食糧調達の当番である。袋に適当に詰めてもらって、先程帰宅した。硬貨などの入った袋は出入り口にひっかけ、食卓に置いた袋を逆さまにしたところであった。
じぃと価値の低い硬貨を見つめる。
複雑そうに見える彫刻。削れて読めなくなっている部分もある。おそらく、竜か獣、人間が窮屈そうに身を寄せている。
「誰だっけ。そういえば」
夕食のことなどそっちのけで、見入りながら尻尾を揺らす。
少しして、2階から同居人が降りてきた。帰ってたの、と一瞥して流しへと歩いていく。
「ね、ラクリは、お金に描かれてる人って、誰か知ってる?」
脇にあるカップを手に取り、水を注ぐ。
「先代か、先々代の王様じゃなかった? よく彫れてると思うけど」
そうなんだ。彼は一枚だけの硬貨を爪で引き寄せて、器用に咥えた。のしのしと玄関まで歩いてあるべき場所へと落とす。
「ねぇ、硬貨がどこで作られてるのか、知ってる? 王様が描かれてるなら、遺産とかじゃ、ないでしょう?」
食卓についた紅竜は水を一口。次に二つずつある食糧の一つを手にとって、口に運ぶ。
「そうだね。どこなんだろうね? 市場にいっぱいあるんだから、どこかで作ってるんだろうけれど」
もとの位置に戻った青竜も食卓に参加する。
今日も静かな一日が終わりかけている。
◆◆◆◆
現世ではお金は、造幣局が作って流通させてるんですよね。
ならファンタジー世界ではどうなるのでしょう?もしかすると、腐食に強い葉っぱが通貨になっている可能性だってあるわけですよね。
普通に通貨が流通して、それに価値があるとしてやり取りする。そう考えると、疑問に思わない不思議なことですよねぇ。
最低限の文化レベルを示すこともできるお金の話。あなたの世界ではどうですか?
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