[短編(市場)]ここでの食料事情

あまり強くはない日差しだが、畑仕事をしていると、つうと汗が流れてくる。耕すためにクワを振り下ろし、一歩ずれて、また振り下ろす。この老体をこき使ってやっているが、最近は体力の衰えを顕著に感じる。

追い先短いと言われる歳になったが、幸いにも、世界樹へと旅立った長男も、ここに残って手伝ってくれている次男も、少し離れた場所にいる妻も、健在だ。

ここで一生を終えるつもりだが、いつまで畑を続けられるか…。

大きく農具を振り上げて、足元めがけて振り下ろす。ぐいと持ち上げて土をかき混ぜる。すると中にあった古い根っこや隠れていた虫が驚いて歩き回る。

一歩、隣へ移動して。また振り上げる。なんとなく視線が上向いたとき、畑の柵の近くに、先程まではいなかった緑があることに気がついた。ここの者ではない。

ひと作業を終えてから、農具を地面に突き刺し支えにして、彼を呼ぶ。すると半分閉じていた目を開いて返事をする。

山飛竜、と呼ばれている竜らしい。なんでも、市場とこの村を往復して手紙などを融通してくれている物好きなやつだ。

「長男さんから、お手紙でーす」

ぶんぶんと紐のついた手紙を振り回す。アピールするのはいいが、もう少し落ち着けないものか。

近づいてそれを受け取ると、彼はまたふらふらとどこかに去っていく。いつものことだが、心配になる。

彼がいなくなれば、この手紙もなかなかやって来ないのだから。

ひとまず、手紙を家に置いてこよう。家の裏口から中に戻ると、居間では妻が裁縫道具を広げ、今まさに、糸を切ったところだった。

あいつからだ、と手紙を机に置く。はいはい、といつも以上に笑みを深くした彼女に、尋ねた。

「あの山飛竜が満足するようなもんて、あるか?」

もちろん、虚を突かれただろう。目を丸くした後、備蓄倉庫にあるんじゃないかしら、と教えてくれる。

そういえば、十日くらい前の狩りの成果がまだ残ってたか。

「無償で持ってきてくれてるんだ。たまにゃ、いいだろ。」

独り言に、そうですね、と同意してくれた。裁縫箱がパタンと閉じられた。


◆◆◆◆


食性といえば、そこの生活と自生しているものなど、色んな要素が絡み合って出来上がったものになることでしょう。

こういうときに地理とか役に立つわけですが、生憎細かいところまで覚えてないんですよね。特に歴史背景なんて全く覚えてません(教育歴史は暗記ばかりで覚えられないんですよねぇ)。


さて、今回は、pixivに投稿していたトレム×カルの話より、数時間前の話。

どこかのおっちゃんがトレムに食べ物を渡すと。もっと食べ物について掘り下げれればよかったのですが…時間が足りませんね。


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