第2話

 わたしには二人の兄がいる。同居しているのは上の兄だが、16歳も年が離れているので、感覚的には兄妹というより叔父と姪に近い。


「美世子ちゃんいってらっしゃい。いつごろ講義終わる?」


「今日は2限で終わるから、早いよ。12時過ぎ」


「じゃ、ぼくの研究室の最寄り駅で待ち合わせよう。例の中国語の先生、大丈夫だってさ。なんなら発音だけじゃなくて全部みてもらいなよ」


 この兄は大学の講師をしている。中国語の先生、というのはつまりお兄ちゃんの教え子じゃないの。そんなツッコミを思いついた頃にはとっくに最寄り駅に着いていた。

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