第7話 手取り足取りあげ足取り
※下ネタ、セクハラネタ軽くあります
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新規プレイヤー。
彼らを観なくなって久しい。
そもそもまともにプレイヤー自体とすれ違いもしないこのゲームでは新規プレイヤーと遭遇できたことはどれほどの偉業なのかわかるだろ?な?
「おい!おっさん!ざっけんなよ」
「ご利用ありがとうございます、何かお探しでしょうか?」
「この剣、買ったばかりなのにすぐ壊れたぞ!テメェふざけてんのか?!」
「ご利用ありがとうございます、何かお探しでしょうか?」
「こ……のっ!!」
「たくや!やめて!!」
「ご利用ありがとうございます、何かお探しでしょうか?」
キレる少年、止める少女の悲痛な叫び、そして冷静沈着な店主。冷静というかあの手のNPCは同じことしか言えないしさ。
なんだろう、もしかしてNPCから買い物の仕方さえわからないのだろうか。
それにしても"たくや"ね。
まるで本名のようだ。
まさかゲームで本名を名乗るとなると……ガキだな。小中学生がやるプレイヤーネームを自分の名前にするイタイ系のやつ。
地雷だ、特大の地雷。触れたら足だけじゃ済まない地雷だ。
うー、地雷は地雷だが久しぶりにみた新規プレイヤーだ。
ここは手取り足取り揚げ足取りみっちりお兄さんがあんなことやこんなことまで教えてあげようではないか。
止められても未だにNPCの店主に突っかかる少年に俺は近づいて行くとしがみついて止めようとしていた少女の方が気づいたようだ。
少女が"なんですか……?"そう話す前にこちらから話し掛けた。
「これはこれは、どうかされましたか?
……ああ、失礼。SHEOと言います」
紳士的に話しかけてみたつもりだがどうだろうか?
「えっと?シェオさん?中国の方ですか?」
うっわー、え?こいつ。マジか。
別にさ、中国人に間違えられたから引いたわけじゃないんだよ。
雑なコピー製品やマナーを守れない一部の人間が嫌いであって、凄い文化とか綺麗な芸術品も数多くあるし、ね。
いいんだよ。中国をバカにしているわけではない。
ただコイツがまさか出会いがしらに挨拶を返さず個人情報を聞き出そうとしてくるその神経が信じられなかっただけだ。
「私、へんなこと。いいましたか?」
あったりめーだろ!あたりめだよ!イカ臭い!それは嘘。
黙ったままの俺に地雷を踏んでしまったのかと焦りそう質問を投げかけたのだろうが、それが俺の不信感を爆上げさせる。
『またオレ(ワタシ)何かやっちゃいました?』ってか?
なんかやっちゃったんだなぁーあひゃー残念。
はい、いい加減黙るのをやめ話を続けることにした。
「これはこれは、どうかされましたか?
……ああ、失礼。SHEOと言います」
「え?それ、さっき聞きました」
「これはこれは、どうかされましたか?
……ああ、失礼。SHEOと言います」
「え?あの?」
「これはこれは、どうかされましたか?
……ああ、失礼。SHEOと言います」
「…………」
名前を名乗ったんだからお前も名のれよ!グロ表現バリバリのこのゲームをプレイしてるってことはお前ら15歳以上だろ?な?
お前らが来ている制服的な防具をどこで手に入れたのか聞きたいし、俺やそこら辺のNPCどもと違って画素が細かい滑らかなモデルはどうやって導入したのか知りたいし、だから。わかるだろ?
大人になって来て、自己紹介の仕方を忘れたなんてないよな?な?
身長ばっかり伸びて頭は子供ですとか名探偵の逆バージョンなんて困った子じゃないよな?
な?だからさ、早く名前をいえよ。
「これはこれは、どうかされましたか?
……ああ、失礼。SHEOと言います」
「え?いや……だから」
「僕の名前は英雄王ギガメッシ!!」
未だにNPC店主にメンチを切る少年とは別に仲間だろうか、合流した新たな少年は俺に向かってそう言った。
英雄王ギガメッシ?あー、自分のプレイヤーネームにオリジナル称号つけちゃう系かー。
いやー、このゲーム初めてなら仕方ないか。
以前にも言ったがゲーム内でそれが悪行にしろ善行にしろ偉業や目標を成し遂げると強制的に名前の前に称号がついてしまう。
例えば始めたばかりのプレイヤーがクリーチャーを1匹倒せば【見習い】という
称号がつく。
まあ【天下無敵】とかそういう称号であればいいかも知れんが、【見習い】英雄王ギガメッシはダサい。街の滞在時間が外での活動時間の100倍に達すると【引きこもり】という称号を得るのだが、【引きこもり】英雄王ギガメッシはさらにダサい。爆笑ものだ。無知とは罪である。世の中の厳しさを知れてよかったね。
で、それからなんなの?このパチモン感溢れる名前は。ギガメッシュじゃなくてギガメッシ?サッカー選手か英雄かどちらかにしとけよ。人間そんなに多くのことをできるように器用にできてはいないのだから。ギガメッシがいるならテラメッシさんもいるのかな?
「おお!君は英雄王ギガメッシというのか!!よろしくな!」
早速キャラ崩壊。お前は紳士キャラじゃなかったのか、それじゃあ野球少年だろ。と突っ込まれそうだか弁明をいうとすれば、紳士口調とかむり。
君は英雄王なギガメッシのフレンズなんだね?と言わなかった俺を褒めて欲しい。我慢できたえらくえろい。
いや、なんだったかな。
そうそう。
……それにこのゲームだと割とキャラ崩壊あるし。
王様が丁寧口調で報告に上がった一般兵がタメ口とかムービーで見たことあったし。割と重要なシーンがそんなものなのだからプレイヤーの俺たちはもっと自由にプレイしていいとおもうんだ。
「アイナ、この手のキャラは的確な回答をしないと話が進まないからさ、ほら自己紹介」
とかなんとか言ってますが、もしかして俺、NPCと勘違いされてませんか?
「さとうあ、……あああっあんなです!」
さとう?サトゥー……いやなんでもないですまーち。
佐藤ね。本名かな。英雄王もイタイが本名も地雷だな。地雷原かな?ハハッ。今俺の中にネズミッキーが……いやなんでもない。
「佐藤あああああんなさんか、いい名前だね」
いいわけあるか。いいわけないが、女の子って可愛いとかいい名前とか言っとけばなんとかなる。そう人生のバイブルにはそんなことがかかれていた。
それにしてもあああああんなとはあああああさんの派生形かな。RPGの勇者の名前によくいるよね。
「佐藤あんなです!!そんな名前じゃありません!」
いや、もう遅いかな?
「そこの少年は……一旦黙ろうか」
腰に差していた初期装備の"がんじょうなきのぼう"でメンチを切り続ける少年を殴ると泡を吹いて倒れた。
「メンチ切るのはいいけどあんまりキレると血管もキレちゃうよ?ハハッ」
話を聞いていないのか、ピクピクと痙攣しながら白目を剥ぐだけで反応はない。
絶句する二人を横目に話を続ける。
「君たちはこの街に来て短いのかな?」
「……ひっ」
なんだよ、何に怯えるってんだ?
このくらい割とあるだろ。
「君たちはこの街に来て短いのかな?」
「は、はい。僕たちはまだここに来て短いです」
「そうか…………ふむ、君たち自分のパラメータを開くことは出来るかな?」
「パラメータ、ですか……?」
変なものを見るかのような表情で佐藤あああああんなは俺を見た。
いいなー!それ、きぃっーー羨ましい、!アタシハンカチ咥えて妬いちゃうわ!
なんだよそれ、そのモデルいいな?blenderで作ったの?それともMAYAか?
くっ、ずるい!複雑な表情の変化とかずるいぞ!俺なんかな。できの悪い不気味なマネキンに目や口のシールを貼って鬘(カツラ)を被せたかのような凄まじく不気味な見た目なんだぞ!
「パラメータ、知らない?」
「は、はい。しりません」
「パラメータというのはステータスと違うのですか?」
「ステータス?なんだそれは」
そんなものはこのゲームにはない!!残念だったなぁ!ステ振りもないし、パッシブスキルもないゾォ!
「いや、なんでもないです」
「それってステ振りもないってこと?」
「多分」
「そう……」
早く黙れ。先話せないだろ。
「パラメータはプロフィールと唱えることで呼び出せるが……」
「プロフィィール!!!」
「プロフィールッ!!!」
あの、なんでそんな叫ぶ必要。あっ……うん、そういうお年頃ね。
「プロフールはプロフィール開示を選択することで他者に見せることが出来る。見せても見せなくてもいいが、わからない点があれば答えることが可能だ」
「じゃあ私は見せます」
「おい、アンナ」
「だって渋っても仕方ないでしょ。ちょっとアレな人だけど知識を知る機会がいつ来るかわからない。知らないのは罪だが知らないのに知ろうとしないのはもっと罪だって聞いたことない?」
アレな人ってなんだ。エッチぃなお兄さんだけど……ちがうな。アレに当たるのはイケメンなだな。
知ろうとしないのは罪の下りは流石に聞いたことないなー。似たようなのなら知ってるけど。
「で、どうするの?」
この子、さっきまでビビりまくりだったのに急に立ち直ったし。
メンタルつよいね。
「見せます」
「おお、それでこそ男だ!あっぱれ」
「こいつムカつくんだが」
「ダメだよ、そんなこといっちゃ。多分いい人だと思うし」
おい、お前たちディスってんだろ。
褒めてもダメ、触ったらセクハラ。どうしたらお近づきになれるんだっ!!
ふざけてあるうちに開示したのか、目の前に浮かぶ彼らのプロフィールをみて頭を傾げた。
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英雄王 ギガメッシ
種類 異世界人
職業 聖騎士
筋力 84
気力 41
体力 12
精神 2
器用 2
スキル 言語理解、鑑定、武技、経験値15倍、全属性魔法、創造魔法、結界魔法
称号 【--】
加護 創造神の祝福
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「英雄王ギガメッシ?ええ!?ギガメッシュ!ギガメッシュなんだよ!」
「残念だったね、また来世頑張りなよ」
「投げやり過ぎませんか!?ってなんか方法ないですか?」
「いいじゃないか、なんだか運動神経が良さそうな名前で」
「話聞けよ」
「佐藤あああああんな、君もいいかな?」
「あああああんなじゃありません!」
「いや、プロフール見てみなよ。」
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さとう あああああんな
種類 異世界人
職業 聖女
筋力 2
気力 101
体力 5
精神 17
器用 20
スキル 言語理解、鑑定、武技、経験値15倍、全属性魔法、創造魔法、神聖魔法
称号 【--】
加護 創造神の祝福
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ま、よかったね。本名プレイはあんまり推奨されたものじゃないし。
「いやぁぁぁぁぁ!!!」
はいはい定期定期。うるさいなぁ。
そういう悲鳴をあげて悲壮ぶるのはいいから。
「プロフールに表示されているパラメータについて説明いいだろうか?」
悲鳴を無視して説明をしようとするといつのまにか起き上がっていた公衆の前で恥じらいもなく泡を吹いた少年が立ち上がり挑発的な表示を浮かべて俺に問いかけた。
「いや、まてよ。あんたもプロフィール見せろよ」
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