第6話 NPCとソ連兵は畑から取れるんだ
街へ入ると途端に耳を賑わいが包んだ。
今まで流れていた放牧的なBGMとうって変わりテンポの速いリズミカルなものへと変化した。
街の出入り口である門に入ったら途端に賑わいが聞こえるってのは現実的ではない。
それを言っちゃいかんか。
システム上、マップに入らないと賑わいも含めてBGMは聞こえないのだ。
つまりネズミーランドみたいなものだ。
テーマごとにBGMを変えているんだよ。
所謂中世ヨーロッパの街並というのは、テレビや絵画で幾度となく見たことのあるものだったが流石に街全体が巨大な壁に覆われたようなものは見たことがない。
だから、門から中に入っていきなり商店街があるというのはへんな作りではないか?普通、敵が入って来ても大丈夫のように防衛に向いた都市の設計をしていてもよくね?とそう思う自分はおかしいだろうか。ひとつ言えることはこの街を設計したやつは頭がおかしい。
世界観的には魔物と人類は戦っていて人類は追い詰められている中、利権を求めて人類同士でも戦っているというものなのに、壁の中入ったら城まで真っ直ぐの一本道とかなめてんのか?
戦う前から降伏を受け入れているような街だろ?
敵が壁を突破して中に入って来たら、屋台を出しているNPCたちがそいつらに『コッコの串焼きはいかがー?』
『今ならポーション割引中ですよ!』『へへへ、お客さぁん?いい装備してるね?これから領主館に攻め入るって?それならこれ、バスターソード+5。お客さんの腰のモンには劣るが予備にどうだい?うん?はい、まいどありー!』
『貴様らここがどのお方の城だかわかっておるのか!?……え?金くれるだってマジか。ああどうぞどうぞ、ああそういえばここのルールでもう少し大目に払ってもらえると武器の持ち込みも可能になりますよ?へへへ、あの約束、お願いしますよ?』
馬鹿かな。
最後のやつ、やりそうな奴いるんだよなぁ。
まあ、壁に引きこもっちゃったしそんなストーリーはないからありえんけど。
街にいても外にいてもモンスター……じゃなかったクリーチャーに襲われるのは変わらないというのにわざわざ街に来たには理由がある。
一つ目は街の住人を犠牲に肉の壁を築くこと、街全体を覆う立派な壁は見かけ倒しでクリーチャーがすり抜けてくるし、門番の衛兵どもはラスボスよりtueeee癖に、能力値一桁第のその辺のいる雑魚NPCからばっかりカツアゲしてるしな。
本当に役ただないけど肉壁は最大の防御だ。
寝るというコマンドがあり、寝ると体力や装備の耐久値が回復するのだが、ストーリー制のゲームではなく、24時間何かが起こり続けるストレスゲーの為、野外で寝ている時は襲撃を受け死に戻りしたことがあった。
クリーチャーはより弱い対象を狙うと日本人が運営していた時代に言っていたのでそれからは街では住人を肉壁に、野外では護衛(サポートキャラ)をパーティに入れ生贄にしている。
もし仲間にプレイヤーがいてそいつが襲われた場合、何も起こらないが、NPCがクリーチャーに襲われると鬱陶しいくらいに毎回毎回ムービーが流れ、強制的に起こされることになる。
つまり目覚まし時計……いや鉱山のカナリアだったかな。
それにNPCを使っている。
特に意味はないのだが、オープンワールドのゲームあるあるで、沢山何かをすると称号を獲得できるというシステムがこのゲームにもあって、NPCを見殺しにし続けた結果、葬儀屋なる不名誉な称号がついてしまった。
自分がNPC側だったらこんな称号を持っている奴と絶対パーティを組まないが、NPCは馬鹿だから、必ず何パーティーか候補がいて割と選び放題だ。
一応、好感度システムなるものがあるらしいがそれが発生している現場を見たことがない。
ドロップ狙いで商人のNPCにモンスタートレインして突っ込んだことはあっても直接殺したことは一度としてない。
ともかくだ、一つ目は壁の確保だ。
もう一つの目的は……。
そこまで考えたところで、罵声が響き渡った。
その声にNPCたちは静まり返り……あ、そんなことはなかった。
何も起きていないかのように、賑わい続けていた。
俺は信じられなかった。
その光景にサッと血の気が引いて辺りの音が聞こえなくなったのかもしれない。
嘘だろ。
マジか。
あれは、あれは…………新規プレイヤーだ。
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